清澄せいちょう)” の例文
海岸の白砂はくさのないのは物足らぬけれど、このあたりから清澄せいちょうな温泉が出ると思えば、それくらいのことは我慢しなければなりません。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
世間にばかりとらわれてしまって、まったく最初考えてきたような雑念なき俗縁なき清澄せいちょう菩提ぼだいは求められなくなってしまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして読めば読むほど、底の知れない苦悩と、限りなく清澄せいちょうな心境とに、同時にさそいこまれて行くような気がするのだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
清澄せいちょうで、明朗で、光輝と愛情に恵まれ、豊醇優麗ほうじゅんゆうれいを極めるのがモーツァルトの音楽の特色であると言ってもよい。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
こんな風のない空気の清澄せいちょうな日は、一層よく胡弓が鳴ることを木之助は思うのであった。そうだ、ゆこう。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
益軒の紀行文にも岩の赤くなっていることが書いてある。特に湯の清澄せいちょうなことは書いてない。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
然るに今日は既にビジテリアン同情派のかた結束けっそくを見、その光輝こうきある八面体の結晶けっしょうとも云うべきビジテリアン大祭を、この清澄せいちょうなるニュウファウンドランド島、九月の気圏きけんの底に於て析出せきしゅつした。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
昨日今日の日和ひよりに、冬の名残なごりんやりと裸体からだに感ぜられながらも、高い天井てんじょうからまぶしい陽光ひかりを、はずかしい程全身に浴びながら、清澄せいちょう湯槽ゆぶねにぐったりと身をよこたえたりする間の、疲れというか
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
荒田老は、平木中佐の所論の絶対の肯定者こうていしゃとして、怪奇かいき魔像まぞうのように動かなかったし、大河無門は、その絶対の否定者として、清澄せいちょう菩薩像ぼさつぞうのように動かなかったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
透明とうめい清澄せいちょうで黄金でまた青く幾億いくおくたがい交錯こうさくし光ってふるえて燃えました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
樹林じゅりんこずえをすいて見える清澄せいちょうな秋の空の青さ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)