清廉せいれん)” の例文
清廉せいれん、誘惑をしりぞけ圧迫を物ともせず、ギャング掃蕩そうとうのためには身命さえも賭そうという、次期州知事の候補者の一人だ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だが、おひとよしの町人は——日本橋区は金で動かないからという策略があたって、握飯をもって、草鞋で歩くとは、清廉せいれんな人だと当選させた。
清廉せいれんをもって鳴る平淡路守とは、言葉のいき掛りで正面衝突をしそうだし……いや、どうも、山城守、くだらないことを言い出して散々になりそうだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は、お通に対して、清廉せいれんなる恋を抱いていた。特に、清廉なる——と自覚しているのは、お通が、誰を愛しているか、お通の胸をよく知っているからである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その清廉せいれんさの故に、何時まで經つてもこの貧乏から拔け切れないのが、平次信仰で一パイになつて居るガラツ八には、不思議で腹立たしくてたまらなかつたのです。
案じゐるよしたしかに知たる忠相ぬしひとりつく/″\思ふ樣お光は奇才きさい容貌ようばうとも人にすぐれしのみならず武士の眞意しんいを能くわきま白刄しらはふるつて仇をたふすに其父もまた清廉せいれんにて是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蕪村ぶそんとか崋山かざんとかいうような清廉せいれんな画家になるだろうと思ったら大ちがいでした。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さうした実業家の家庭に、武士の血をひく官吏の環境にかなり厳しく育て上げられ、しかも清廉せいれんな地方官の妻であつた母が、あべこべにリベラリズムの空気を注入しなければならなかつた。
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
けれども青砥は、決していやしい守銭奴しゅせんどではない。質素倹約、清廉せいれん潔白の官吏である。一汁いちじゅう一菜いっさい、しかも、日に三度などは食べない。一日に一度たべるだけである。それでもからだは丈夫である。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
のち郡奉行こおりぶぎょうとなり、昔橘良基よしもとが五国守となりし時、その処身の秘訣を述べて「百術は一清にかず」といえるをとりて、職にる間「不如一清」の四字を刻したる印を用い、清廉せいれんを以て自からも期し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
卑怯ひきょうにも陋劣ろうれつにも、金の力であの清廉せいれんな父を苦しめようとするのかしら。そう思うと、瑠璃子は、女ながらにその小さい胸に、相手の卑怯をいきどおる熱い血が、沸々と声を立てゝ、煮え立つように思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
クルトは、清廉せいれん頑検事のロングウェル氏に話したのみと言うが、そのロングウェル氏はルチアノ一派の対敵——その辺の消息が、皆目分っていない。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その清廉せいれんさの故に、いつまで経ってもこの貧乏から抜け切れないのが、平次信仰で一パイになっているガラッ八には、不思議で腹立たしくてたまらなかったのです。
曹操も、その清廉せいれんを信じて、彼の憂いをなぐさめ顔にいった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中に、一流新聞の記者ほど役得のないものはなく、名のある新聞の記者ほど清廉せいれんなものはない。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
彼は清廉せいれんであるとともに、正直である。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中には驚くべき清廉せいれんな君子人も少なくはなかったが、それは物心ついてから、私が掘り出したことで、その例をもって侍階級の一般を律するわけに行かず、私の少年の頃の憎悪は
銭形平次打明け話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)