気短きみじか)” の例文
旧字:氣短
美人は鉄をいたわりて、「お前、何悪いことをしやったえ。お丹はあの通り気短きみじかだから恐怖こわいよ。私がわびをしてあげる。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
... 買いますと形が崩れて色が悪くって長く置くとお砂糖が舌へジャリジャリと当ります。あれは強い火で気短きみじかに煮たのだとおっしゃいましたね」お登和嬢
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
おごり誇らせるためと、もう一つは、西涼の兵は悍馬かんばの如く気短きみじかだから、その鋭角をにぶらすため、ことさらに、悠長と見せて彼を焦立いらだたせたまでのこと
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るに勝三郎は東京座における勝四郎のつとめぶりにあきたらなかった。そして病のために気短きみじかになっている勝三郎と勝四郎との間に、次第に繕いがたい釁隙きんげきを生じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
きんさんは、親方おやかたも、自分じぶんのように、両親りょうしんがなく一人ひとりぽっちだったこと、気短きみじかで、しかられるときはこわかったが、人情深にんじょうぶかい、いいひとだったことなど、おもしました。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ブラウンは額に八の字を寄せ、いつもに似合わぬ気短きみじかになって鋤の柄をバタバタとはたいた。
気短きみじかな馬はとうと噛合かみあひを始めた。その拍子に馬車が大揺れに揺れたと思ふと、大型な絹帽がころ/\と博士の肩を滑り落ちた。無慈悲な見物人はすべつこい博士の頭を見て声を立てて笑つた。
幸村へあいさつして、気短きみじかに立ちかけると、幸村も、せめて一夜はお泊りをとある所だったが、主従の気もちを察してか、強いてともいわず、大助と嫁を呼んで
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのときは、二人ふたり言葉ことばに、やむなく、気短きみじか叔父おじさんも我慢がまんをせずにはいられませんでした。
人の身の上 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何のジャムでも悪いのにそういうのが沢山あるのは強い火で気短きみじかに煮るからです。モー一つ肝腎かんじんなことは煮ながら根気好く上へ浮いて来る白いアクをすくい取らねばなりません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
金沢の目貫めぬきの町の商店でも、経験のある人だから、気短きみじかにそのままにしないで、「誰か居ませんか、」と、もう一度呼ぶと、「はい、」とその時、なまめかしい優しい声がして、「はい、」と
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「一国の政事まつりごとを執らせられる方が、そんな気短きみじかな事を仰有るもんぢやござりません。兎角気長に構へさせられてな。今に御覧ごらうじませ、この種から立派な柿の実をらせて御覧に入れます。」
古時計は年を取つて気短きみじかになつてゐたので卅分ばかり進んでゐた。
相手は気短きみじかの夕立で、博士はお尻の長い話し好きである。