歌仙かせん)” の例文
その多数な「歌仙かせん」や「百韻ひゃくいん」のいかなる部分を取って来ても、そこにこの「放送音画」のシナリオを発見することができるであろう。
ラジオ・モンタージュ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
拜殿の欄間らんまには、土佐風とさふうゑがいた三十六歌仙かせんが行儀よくつらねられ、板敷の眞中まんなかには圓座ゑんざが一つ、古びたまゝに損じては居なかつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一、えき源氏げんじ、七十二候などその外種々の名称あれども多くは空名に過ぎず。実際に行はるる者は歌仙かせんを最も多しとし、百韻ひゃくいんこれに次ぐ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
歌が上手じょうずで、前者が三十六歌仙かせんの一人、後者が後六々選の一人である点、前者に伊勢物語があるように、後者にも平中物語とか平中日記とか云うものがある点等でよく似ている。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見立て三十六歌仙かせん在五中将ざいごちゅうじょうが借金の言い訳を考えているといった姿態ポーズです。
俚諺ことわざとみを取て目を廻し身代に苦みし者漸々やう/\金のつる有付ありつきヤレ/\嬉しやと思ひ病氣付事あり是心のゆるみより出るとかや茲に畏くも 人皇百九代 後水尾ごみづのを天皇には至て和歌を好ませられ後々のち/\三十六歌仙かせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
発句は百韻五十韻歌仙かせんの圧縮されたものであり、発句の展開されたものが三つ物となり表合おもてあわせとなり歌仙百韻となるのである。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
差上しに二條家御感ぎよかんの餘り其まゝ奏聞そうもんなし給へば賤敷いやしき女にもかゝ風流ふうりう有けるよと即座そくざに御うた所へつかはされ歌仙かせんくはへさせられ又北面ほくめん北小路きたこうぢ從五位下東大寺とうだいじ長吏ちやうり若狹守藤原保忠わかさのかみふぢはらやすたゞ 勅使ちよくしとして祇園へいたり 勅使なりと聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
多くの映画は一通りは論理的につながったストーリーの筋道をもっているのに、連句歌仙かせんの三十六句はなんらそうした筋をもたないのである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)