横奪おうだつ)” の例文
(楊儀、姜維の徒が、丞相こうぜられるや、たちまち、兵権を横奪おうだつして、乱を企てておるので、自分は彼らを討つ所存である)
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵がドーブレクから盗奪とうだつしたもの、それを彼はドーブレクの寝ている間に途中でうまうまと横奪おうだつせんとするのだ。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
時、左膳に利あらず、火事装束の五人組に稀刀きとう乾雲丸を横奪おうだつされて、すぐに塀外へ駈け出てみたときは、すでに五梃の駕籠がいずくともなく消え失せていたあとだったというのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とお丹の下知げじに、おおかみころもまとい、きつねくらい、たぬきは飲み、ふくろう謡えば、烏は躍り、百足むかでくちなわ、畳を這い、いたち鼯鼠むささび廊下を走り、縦横交馳こうち、乱暴狼藉ろうぜき、あわれ六六館の楼上は魑魅魍魎ちみもうりょう横奪おうだつされて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まず嫡男の劉琦りゅうき君をそそのかして、後日、荊州を横奪おうだつせんと企んでおるのを知らんか。彼を生かしておくのは、われわれの国の災いだと思う」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法師野の大庄屋おおしょうや狛家こまけの屋敷を横奪おうだつして、わがもの顔にすんでいた和田呂宋兵衛は、腹心の蚕婆かいこばばあ昌仙しょうせんをつれて、庭どなりの施無畏寺せむいじへでかけて、三重の多宝塔たほうとうへのぼり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだけ明智の軍容は強化され、光秀の横奪おうだつした天下を天下にゆるしておくことにもなる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の場合は、その一州も、無名の暴軍や悪辣あくらつな策謀を用いて、いて天に抗して横奪おうだつしたのではなく、きわめて自然に、めぐり来る運命の下に、これを授けられたものといってよい。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
必ずや蜀を横奪おうだつする考えにちがいない、とまず劉璋を疑わせ、また漢中の張魯ちょうろへも、物資軍需の援助を云いやり、しばらく玄徳を苦しませて、後おもむろに荊州を取るのが一番の良策でしょう
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気鋒きほうすでに、天下を横奪おうだつはらとは見ゆ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は天下横奪おうだつの賊である。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)