楼門ろうもん)” の例文
旧字:樓門
快川かいせんは、伊那丸いなまるの落ちたのを見とどけてから、やおら、払子ほっすころもそでにいだきながら、恵林寺えりんじ楼門ろうもんへしずかにのぼっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芝増上寺しばぞうじょうじ楼門ろうもんをしてかくの如く立派に見せようがためにはその門前なる広い松原が是非とも必要になって来るであろう。
八七山院人とどまらねば、八八楼門ろうもん八九荊棘うばらおひかかり、九〇経閣きやうかく九一むなしく苔蒸こけむしぬ。
はばひろ石段いしだん丹塗にぬり楼門ろうもんむらがるはとむれ、それからあのおおきなこぶだらけの銀杏いちょう老木ろうぼく……チラとこちらからのぞいた光景ありさまは、むかしとさしたる相違そういもないように見受みうけられました。
今に左甚五郎ひだりじんごろうが出て来て、吾輩の肖像を楼門ろうもんの柱にきざみ、日本のスタンランが好んで吾輩の似顔をカンヴァスの上にえがくようになったら、彼等鈍瞎漢どんかつかんは始めて自己の不明をずるであろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう自ら先に、楼門ろうもんの方へ二、三歩、陽あしと往来を避けて立った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「さわぐな、うろたえるな! 大衆だいしゅは山門におのぼりめされ。わしについて、楼門ろうもんの上へのぼるがよい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心頭しんとうめっすれば火もすずし——と快川和尚かいせんおしょう恵林寺えりんじ楼門ろうもんでさけんだ。まけおしみではない、英僧えいそうにあらぬ蛾次郎がじろうでも、いまは、火のあついのを意識いしきしなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、西重門にしじゅうもんかわへ寄ろうとすると、楼門ろうもんの内から、ゾロゾロ吐き出されてくる参詣人の中で
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)