楼台ろうだい)” の例文
数十間の楼台ろうだいを築き、さらに巍々ぎぎたる層々の五重が設計されてあり、総塗そうぬめ、大矢狭間おおやざまを開き、頂上の瓦は、悉く消金けしきんをもってるとある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芝浦しばうらの月見も高輪たかなわ二十六夜待にじふろくやまちも既になき世の語草かたりぐさである。南品なんぴんの風流を伝へた楼台ろうだいも今はたゞ不潔なる娼家しやうかに過ぎぬ。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
この室は、漢于仁の故郷であるところの浙江省せっこうしょう杭州こうしゅうの郊外、万松嶺ばんしょうれいの上に立つ、直立二百尺の楼台ろうだいのうちにあって、しかもその一番高いところにあった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
およそ月を観て興を惹くは、山におけるより水におけるをすぐれりとす。月東山を離るといふの句は詞客しかくの套語となれりといへども、実は水に近き楼台ろうだいの先づ清輝を看るを得るの多趣なるにかず。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
やぐらはいまや焼け落ちんとしていた。そのほか殿廂でんそう楼台ろうだいことごとく火のなみである。しかも城中いたるところにきらめく敵味方の槍と槍、太刀と太刀。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芝浦しばうらの月見も高輪たかなわ二十六夜待にじゅうろくやまちも既になき世の語草かたりぐさである。南品なんぴんの風流を伝えた楼台ろうだいも今はただ不潔なる娼家しょうかに過ぎぬ。
ことに、どうしたわけか、この楼台ろうだいが震動すると共に起る音響に対して、興味がひかれたのだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
西の丸、本丸、楼台ろうだい、多門など——徳島城の白い外壁は、その鬱蒼うっそうによって、工芸的な荘重と歴史的なさびをのぞませ、東南ひろく紀淡きたんの海をへいげいしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(何故、自分の先祖は、この楼台ろうだいの頂上に、たった一つの小窓しか、明けなかったのだろう)
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仰ぐと、黄金のぼう白碧はくへき楼台ろうだい、大坂城の大天守閣は、市のどこからでも見える。三郎兵衛は田舎者のように、大路小路を迷って、ようやく、脇坂甚内の邸をたずねあてた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした一方には楼台ろうだい二座、書院や待客堂たいかくどうなども、廊から廊へ、つづいて見える。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花の楼台ろうだいには、楽手がくしゅや歌姫がならび、玻璃はり銀盤ぎんばんの卓には、珍味が盛り飾られて、朝野の貴紳があらゆる盛装を競ッていた。中でも、一きわ目につく貴公子は、どういう身分のお人なのか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)