やな)” の例文
それをやなで取れるだけ取つて、暁にならぬうちに家に帰つて知らんふりしてゐるのである。これを『酢川落すかおち』と唱へる。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
北越の山ざかいを越え、雲の峰のくずるるような大軍が、残暑の七月、やなから田神山たがみやまを経、余吾よごもとのあたりへ濛々もうもうと陣地を構築していた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門前寺のやなに落ちたといふ川鱒を持つて來て酒が始つたので、病床のお柳までが鉢卷をして起きるといふ混雜、客自慢の小川家では、吉野までも其席に呼出した。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
押手ゆのてやなのくづれあゆさみだれちて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
やなはふたりのたてにして
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
十四日、十五日も、逃げくずれる敵を追って、やなから田神たがみ田部たべ引田ひきたなどという部落部落を、残暑に乾ききっている夏草の野を、血しおで黒くするほど駈けくした。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叔母一行が来て家中やうちが賑つてる所へ、夕方から村の有志家が三四人、門前寺のやなに落ちたといふ川鱒をつて来て酒が始つたので、病床のお柳までが鉢巻をして起きるといふ混雑
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)