桜草さくらそう)” の例文
旧字:櫻草
雪割草ゆきわりそうは、だれかとおもって、そのほうると、しゅろちくかげから、うすあかいほおをして、桜草さくらそうわらいながらいっているのでありました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
現に今日も、この卓子テエブルの上には、とうの籠へ入れた桜草さくらそうの鉢が、何本も細い茎をいた先へ、簇々ぞくぞくとうす赤い花をあつめている。……
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
崖の根を固めている一帯の竹藪たけやぶかげから、じめじめした草叢くさむらがあって、晩咲おそざきの桜草さくらそうや、早咲きの金蓮花きんれんかが、小さい流れの岸まで、まだらに咲き続いている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
わたくしが小学生のころには草花といえばまず桜草さくらそうくらいにとどまって、殆どその他のものを知らなかった。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は一握の桜草さくらそうを引きむしってほおの涙を拭きとった。海は月出の前で秘めやかに白んでいた。夜鴉よがらすが奇怪なカーブを描きながら、花壇の上を鋭い影のように飛び去った。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
桜草さくらそうのように綺麗きれいなので、私は胸がどきどきして、とても歩きにくかった、というような事を書いたのでしたが、何だか、あまり子供っぽく、甘えすぎていますから、私は、いま考えると
千代女 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「うん、そいつはね、おれの所にね、桜草さくらそうがあるよ、それをお前にやろう。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いろあをざめし桜草さくらそう
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
桜草さくらそう姿すがたおもかべては、なみだぐんでいたのでしたが、明日あしたは、ふたたびいっしょになれるといて、うれしくてなりませんでした。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
野村は近眼鏡の下からしばらくレダを仰いでいた後で、今度はその眼を桜草さくらそうの鉢へやると、腹の底から大きな息をついて
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしは、昨日きのうから、あなたをっていました。」と、雪割草ゆきわりそうは、桜草さくらそうをながめました。そして、昨日きのうは、かわいらしいみつばちのきたことをはなしました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)