枝振えだぶり)” の例文
九里は又マロニエの幹を長い棒麺麭ぼうパン、梢の枝振えだぶりを箒、白樺を「砂糖漬の木」などと言つた。さうして三人が歩きなが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
と言つて、障子を引明けると、庭にある枝振えだぶりの松がうまく立花のなかに取入れられたさうだ。流石に池坊式でこれにはこしらごとわざとらしさがある。
自分から云はせると、校長と謂ひ此男と謂ひ、營養不足で天然に立枯になつたほうの木の樣なもので、松なら枯れても枝振えだぶりといふ事もあるが、何の風情もない。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
慣々なれなれしく私のそばへ来て、鍋のけてある水中みずのなかを覗いて見たり、土塀から垂下っていた柿の枝振えだぶりを眺めたり、その葉裏から秋の光を見上げたりして、何でもない主家うち周囲まわり
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
湯島から三里も来たころ、枝振えだぶりよき栂の枯木を見つけて写生する。すぐ近くの笹の中では、藪鶯が一羽二羽、ここに絵筆走らす旅人ありとも知らで、ささきの声がせわしない。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
たとえば遠方の山に桜が一本美しく咲いていても美の光りはる者の眼に映ずる。同じ場所に同じ大きさの松があって枝振えだぶり如何いかに面白くとも数歩の近くへ寄らなければその奇を賞する事が出来ない。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
小供のうち花の咲いた、葉のついた木瓜ぼけを切って、面白く枝振えだぶりを作って、筆架ひつかをこしらえた事がある。それへ二銭五厘の水筆すいひつを立てかけて、白い穂が花と葉の間から、隠見いんけんするのを机へせて楽んだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)