果実このみ)” の例文
旧字:果實
そうして再び目覚めた時には私の側に椰子の果実このみと呑み水とが一椀置いてあった。果実このみを食って水を飲むと私はようやく元気づいた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蓮太郎も一つ受取つて、秋の果実このみのにほひをいで見乍みながら、さて種々さま/″\な赤倉温泉の物語をした。越後の海岸まで旅したことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
賤しい売女に接近して禁断の果実このみあじわい、出船の間際に、生涯の煩いになった、悪い病気を背負ったという例は、決して少くは無かったのです。
禁断の智慧ちえ果実このみひとしく、今も神の試みで、棄てて手に取らぬ者は神のとなるし、取って繋ぐものは悪魔の眷属けんぞくとなり、畜生の浅猿あさましさとなる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
禁断の果実このみを既に十分に食つてゐるかの女が、何も知らないかれに取つて一種不思議な畏怖に近い感じを感じさせるのはそれは止むを得ないことであつた。
路傍の小草 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
そしてその潮は、ここの果実このみという果実このみをすっかり持っていってしまうのです。ねえ坊や、これから坊やとオジチャンとオネエチャンと三人で、どこか安楽な島へでもゆこうじゃないの
「太平洋漏水孔」漂流記 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その到るところに、きらきらとした赤い果実このみが露のように燦めいていた。ひいらぎや寄生木や蔦のぱりぱりする葉が光を照り返して、さながら無数の小形の鏡が散らかしてあるように見えた。
大人は知恵の実を食べて、善悪を知り、『神のごとく』なってしまった。そして今でも引き続きやはりその果実このみを食べている。ところが子供はまだ何も食べないから、今のところまだ全く無垢むくなのだ。
君よ、今の役に立たぬ果実このみを摘むなかれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さま/″\なる果実このみこと/″\く熟し
小鳥も果実このみも高い空で眠りに就き
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
愛らしき果実このみと花のまつわれる
果実このみ青物あをもの北国ほつこく
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すると今まで気が付かなかったが室の片隅のテーブルの上に、果実このみがうず高く積んであって椰子の実で拵えた椀の中に飲料水さえ盛ってある。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伊予守忠弘は、こうして禁断の果実このみを味わったのです。
初めに取れる果実このみ年経としふれどあか
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
食物くいものと云えば小鳥や果実このみ飲料のみものと云えば谷川の水、そうして冬季餌のない時は寂しい村の人家を襲い、鶏や穀物や野菜などを巧みに盗んで来たりした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黄金きん果実このみに飽くであろ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そして私の枕もとには新鮮な果実このみが置かれてある。私は朝飯をそれで済ますと体に勇気が充ちて来た。やおら私は立ち上がって森林の旅を続けようとした。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わずかに残っている米と味噌、大事にかけてたくわえておいた去年の秋のいろいろの果実このみ食物たべものと云えばこれだけであったが乳も出れば立って歩くことも出来た。赤児も元気よく育って行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新鮮な果実このみ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)