条々じょうじょう)” の例文
旧字:條々
やなぎれて条々じょうじょうの煙をらんに吹き込むほどの雨の日である。衣桁いこうけたこんの背広の暗く下がるしたに、黒い靴足袋くつたび三分一さんぶいち裏返しに丸く蹲踞うずくまっている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ヤヤッ! そういう間も、もう水がたまりだしたぞ。土ふまずへ、ヒタヒタと水がきた」事実、部屋全体にうすく水が行きわたったらしく、線のほそい滝の水が、条々じょうじょうと……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かねて申合せしごとく、尾越おごしどの旗挙はたあげの儀はかたく心得申しそうろう、援軍ならびに武具の類、当月下旬までに送り届け申すべく候、そのほか密計の条々じょうじょう相違あるまじく、ねんごろに存じ候、小田原おだわら
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ふもとからあがろうとする坂の下の取着とッつきところにも一本ひともと見事なのがあって、山中心得さんちゅうこころえ条々じょうじょうを記した禁札きんさつ一所いっしょに、たしか「浅葱桜あさぎざくら」という札が建っていた。けれども、それのみには限らない。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よそおいは鏡に向ってらす、玻璃瓶裏はりへいり薔薇ばらを浮かして、軽く雲鬟うんかんひたし去る時、琥珀こはくの櫛は条々じょうじょうみどりを解く。——小野さんはすぐ藤尾の事を思い出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)