有様ありよう)” の例文
旧字:有樣
かくすにゃあたらないから、有様ありようにいってな、こと次第しだいったら、堺屋さかいやは、このままおまえにはあわせずに、かえってもらうことにする」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ええそれがわたくしは襟許から、氷を浴びたような気が致して、釘附にされたように立止って見ました。有様ありようは腰ががくついて歩行あるけませなんだので。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
有様ありようを申せば、われら通辞の者にても、オランダの文字を心得おるものは、われら一両人のほかは、とんとござらぬ。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「わたしというものもある身で、短気な心を出さんしたその訳を、有様ありように言って聞かせてくださいませ」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「なかなか、そんなことで、有様ありように口を開く男とも見えませぬ。しかし、不愍ふびんなところもあるので」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このまゝ真直まっすぐに東京へ帰らうか、それとも湯河原へ引返さうかと、わたくしは色々にかんがへてゐましたが、どう考へてもそんなことの有様ありようは無いやうに思はれました。
彼は宮を見る毎におほいなる手柄をも成したらんやうに吾がれるほどの親といふ親は、皆才覚無く、仕合しあはせ薄くて、有様ありようは気の毒なる人達かな、とそぞろに己の誇らるるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
広言には似たれど、真実のこと。桑山殿へ、瀬兵衛がそう申したと、有様ありように、伝えておくりゃれ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有様ありようは、関東へ下って、慶喜よしのぶ公の麾下きかに加わって、一働きいたそうとの所存と見え申す」
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ここで俺が戸田家の家来たる兄に有様ありようを打明けてみたところで、別段差障さしさわりの生ずるようなこともあるまい。このたびの事は、親兄弟たりともいっさいらすまいという誓約はある。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「今聞けば、撲っても、有様ありようにものをいわぬ男——と仰っしゃいましたが、訊いて下されば、何でもいいます。訊きもせず、幾日も、暗い所へほうり込まれては堪りません」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有様ありようにお答え下されい。われら存ずる子細もござるほどに
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)