最初はじめて)” の例文
咄嗟とっさの間、世にもなまめかしい雪のような女の顔を見たのであった、そうして愛吉がお夏を見たのは、それが最初はじめてだというのである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そして、ひもじいでせう、きつと。る前に何か御飯を食べさせておやりなさい。ミラアさん。御兩親を離れて、學校へ來たのは、最初はじめてなの、お孃さん?」
先達せんだってからちょくちょく盗んだ炭の高こそ多くないが確的あきらかに人目を忍んでひとの物を取ったのは今度が最初はじめてであるから一念其処そこへゆくと今までにない不安を覚えて来る。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかしそれは何故だろう? そうだそれは何故だろう? 葉之助にとって「鼓ヶ洞」は何んの関係もないではないか、今度が最初はじめての訪問ではないか。鏡葉之助は鏡葉之助だ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あかつきの星どもの最初はじめての歌をさまたげはなさらなかった
最初はじめての黒衣よ、どらやきの美しく見ゆる日よ
勘弁かんべんしてらつせえ。うゝとも、すうとも返答へんたふすべもねえだ…わし先生せんせいはれるは、ほぞつては最初はじめてだでね。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんな慇懃いんぎんな挨拶をしたのは、二人とも二人には最初はじめてで。玄関の障子にほとんど裾の附着くッつく処で、向い合って、こうして、さて別れるのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
教場でこそあれ、二人だけで口を利くのは、抑々そもそも生れて以来最初はじめてである。が、これは教場以外ではいかなる場合にても、こうであろうも計られぬ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名誉に、とお思いなすったか、それとも最初はじめての御出産で、お喜びの余りか、英臣さんは現に貴女の御父上おとうさんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これが最初はじめてだ、富山へ来てから一番さきに遣ったのよ。それからね、見ねえ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
李花は病床にあれりしなる、同じ我家の内ながら、渠は深窓に養はれて、浮世の風は知らざる身の、しかくこの室に出でたるも恐らくその日が最初はじめてならむ、長きやまいおもかげやつれて、寝衣しんいの姿なよなよしく
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
李花は病床にあれりしなる、同じ我家の内ながら、渠は深窓に養われて、浮世の風は知らざる身の、しかくこの室に出でたるも恐らくその日が最初はじめてならむ、長き病におもかげやつれて、寝衣しんいの姿なよなよしく
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なれツこになつてしたしんで居たけれども、泊るのは其夜そのよ最初はじめて
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と男泣き、此奴こいつ生れて最初はじめてなるべし。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)