故国くに)” の例文
旧字:故國
「わたくし痣蟹とぶミスター北見仙斎きたみせんさいを信用していました。あの人、わたくし故国くにギリシアから信用ある紹介状もってきました」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
故国くにでは英語は一切使いませんけれど、仏蘭西語は子供の時から習ってましたから、この学校が都合がよろしかったのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「おやおや、故国くにの人だというから、もうちっと好い男だと思ったら……。えっ、あんたがあの、探検屋折竹⁈」
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
首と手足の太い英吉利イギリス女なんかがそのまま故国くに従柿妹いとこへ郵送出来るように、一、二輪ずつ金粉煙草ゴウルド・フレイクスの空缶へはいって荷札までついていて、値段は五十フランです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
春になると、私はいつも故国くにの景色を想いだします。この異国に来てからもう七度の春が巡ってきました。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
入口の片隅かたすみには、故国くにの方の娘達にしてもよろこびそうな白と薄紫との木製の珠数ずずを売る老婆ばあさんがあった。その老婆も仏蘭西人だ。岸本は本堂の天井の下に立って見た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
乃公おれは娘を連れて井下聞吉ぶんきちの所へも江藤三輔の所へも行った、エえ、故国くにからわざわざ乃公おれが久しぶりに娘まで連れて行ったのだから何とか物の言い方も有ろうじゃア
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
故国くにの親類縁者へ手紙を出すものは出す、また江戸に親兄弟のあるものは、それぞれ訪ねて行って、それとなく訣別わかれを告げるというように、一党の気はいはどことなくざわだってきた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
小笠原嶋ブラボがはなに巻く渦のこほろこほろに故国くにこほしき
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「お嬢さんが御病気で故国くにへ帰られるんだそうです」
妖影 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
亡くなりましたもんですから、帰ってまいりましたら自分の故国くにでもなんだかまるで、よその国へでも行ったような気がいたしましてオホホホホホホ
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
今も話しているところじゃが東京に居る故国くにの者はみんなだめだぞ、ろくやつは一匹もらんぞ!
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
大戦が終ったということもそのとき聴いたし、故国くにも変ってしまってナチスという、反共の天下になった事も初めて知った。だが、外地へゆく宣教師には特別の使命がある。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから以後になって五カ条の日韓条約が成立し、なお続いて七カ条の条約が締結されました。これを機会に私は故国くにを出て、この露領の各村落を遊説して来たのであります。
十一月は冬の初めてきたるとき故国くに朱欒ザボンの黄にみのるとき
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
貴女や御父様のお陰で、こうして幸福しあわせに私は毎日を送っていますけれど、何にも知らずに姉がさぞ私のことを案じているだろうと……故国くににいる姉を
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
私が眼をました時はもう夕方とみえて、天井には電気が、……さすがに電気はないとみえて、これも故国くにの習慣なのかも知れません、部屋の隅には金の燭台しょくだいに大きな西洋蝋燭ろうそく
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
湖畔には、朽ちた巨木があの時同様影を浸して、そこにもたれて疲れをやすめていると、あの時、こうして一緒にかけて、故国くにのユーゴの話をしてくれたジーナの優しいおもかげが映ってきます。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)