揉消もみけ)” の例文
ただ少しばかり感心しているところは偉い方のおいでを利用して事件を当局者の手で揉消もみけしてしまう、そうした犯人の悪智慧わるぢえです
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
沖の漁火いさりびを袖に呼んで、胸毛がじりじりに仰天し、やあ、コン畜生、火の車め、まだはええ、と鬼と組んだ横倒れ、転廻ころがりまわって揉消もみけして、生命いのちに別条はなかった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
越中守に話すことは「朱雀調べ」そのものが揉消もみけされるか、悪くするとこちらが罪せられるかもしれない。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうじゃアない、火をけたのだそうです、火を放けて燃え上ろうとする処を揉消もみけしたんだそうです」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぢき揉消もみけせば人はしづまるとともに、彼もまたさきの如し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「——気がしたから、私は話すまい、と思った。けれども、行懸ゆきがかりで、揉消もみけすわけにも行かなかったもんだから、そこで何だ。途中で見たものの事を饒舌しゃべったが、」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
揉消もみけすやうにすツとえるだ——其処そこでざぶんとしづめる、とまたみづなかあらはれる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、これは。」主税は狼狽うろたえて、くるりと廻って、そそくさを開いて、隣の休憩室の唾壺だこへ突込んで、みさしを揉消もみけして、いたく恐縮の体で引返すと、そのボオイを手許てもとへ呼んで
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)