掌握しょうあく)” の例文
世間を思わせるほど博士に価値を賦与ふよしたならば、学問は少数の博士の専有物となって、僅かな学者的貴族が、学権を掌握しょうあくし尽すに至ると共に
博士問題の成行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これすなわち宗祖そうそ家康公いえやすこう小身しょうしんよりおこりて四方を経営けいえいしついに天下の大権を掌握しょうあくしたる所以ゆえんにして、その家の開運かいうんは瘠我慢のたまものなりというべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
後に説くような社会集団の政治闘争は、正にこのような公的な合法性と権威を、自分が掌握しょうあくしようとする闘争なのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
守随しゅずい兵三郎なる者甲府から江戸に入って、関東八州の権衡けんこうつかさどり、のち徳川家康の御朱印ごしゅいんを頂いて東日本三十三ヶ国の秤の管理専売を一手に掌握しょうあく
ではこの隆景は如何いかがといえば、われらとても同様、輝元公をさしいて、天下を掌握しょうあくするなどは思いも寄らぬこと。……しかるに輝元公の器量きりょうはどうか。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皇室というものが実際に日本全土の支配者としてその実権を掌握しょうあくするに至ったのは、大化改新に於てであった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かれはその壮時そうじにおいて加賀かが銭屋内閣ぜにやないかくが海軍の雄将ゆうしょうとして、北海ほっかいの全権を掌握しょうあくしたりし磁石じしゃく又五郎またごろうなりけり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
インドの全権を掌握しょうあくしてしまうだけの土台は確かに出来たかというに、今日はそれだけの見込はないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
だが、その青年将校たちは兵隊を掌握しょうあくしているのは自分たちだと考えている。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
人民を支配する権力を自分が掌握しょうあくせんがためであって、すなわち自分が対立と分化を統合し、国家の意思と秩序を創造し実現しようとするからである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
いつも柴田権六が、攻略の軍をだすときに、そのまえから敵の領土へ住みこんで、とりでのかまえ、水利、地の理、残るくまなくさぐって、一挙に掌握しょうあくするという、おそろしい人物だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われに越王勾践えつおうこうせん忍苦にんくあり、帷幕いばく民部みんぶ咲耶子さくやこ蔦之助つたのすけあり、忍剣にんけん龍太郎りゅうたろう驍勇ぎょうゆうあり、不倶戴天ふぐたいてんのあだ徳川家とくがわけを討ち、やがて武田再興たけださいこうの熱願、いな、天下掌握しょうあく壮図そうと、やわか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすれば、天下はいやおうなく毛利の掌握しょうあくに帰するほかない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)