抱負ほうふ)” の例文
いま羽柴殿から、ご訓示やら抱負ほうふを述べられたが、どうだな、諸公。中央中央とよく仰せあるが、毛利衆からいわすれば、中国こそ中央というかもしれん。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお帰らねば廃嫡はいちゃくせんなど、種々の難題を持ち出せしかど、財産のために我が抱負ほうふ理想をぐべきにあらずとて、彼はうべな気色けしきだになければ、さしもの両親もあぐみ果てて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「や、えらい抱負ほうふじゃぞ」と、友達は笑って去ったが、腹の中ではやや気味悪くも思った。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
多くの作家が、身のほど知らずの抱負ほうふを、無邪気に語っているのを聞いていると、私はその人たちを、うらやましく思い、生きていることが、矢鱈やたらに、つらく思われて来るのです。
正直ノオト (新字新仮名) / 太宰治(著)
「時間はできるだけ有意義につかうがいい。茶話会は三十分もあればたくさんだろう。興国塾の諸君は、こういう時に思いきりふだんの抱負ほうふを述べ、十分批判してもらうんだな。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
多年の抱負ほうふの実現に生々いきいきいそがしげな孔子の顔を見るのも、さすがにうれしい。孔子の目にも、弟子の一人としてではなく一個の実行力ある政治家としての子路の姿がたのもしいものに映った。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
政治に対する抱負ほうふもなく、又、特別の才腕もなかった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
計畫けいくわく抱負ほうふ期待きたいたいしたものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
各自の抱負ほうふをのべること
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「いわるるが如き織田家の抱負ほうふに偽りがないならば、秀吉西下の時には、織田の一翼となって働いてもよい」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、信長の抱負ほうふを語り、秀吉の人となりをそれとなく話し、いつか花房助兵衛の心をまったくとらえていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三成も武弁ぶべん一片でない政治的な頭脳の持主であり、山城守も、弱冠じゃっかんすでに戦陣の武名をち得ていても、その本質はあくまで経世的な抱負ほうふにあり、そういう点でも、非常に
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのみじかい間に、かれの抱負ほうふは途方もなく大きかった。無限な理想があった。それに向い、その障難しょうなんを克服してゆく、一日一日のたまらない愉快な日があった。——しかるに人間の天寿がある。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将来の海外雄飛にわたる抱負ほうふまでを、何くれとなく諮問しもんしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内蔵助は、抱負ほうふを話した。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)