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打返
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うちかへ
心ざすは
何物ぞ
葛籠の
底に
藏めたりける
一二枚の
衣を
打返して
淺黄縮緬の
帶揚のうちより、
五通六通、
數ふれば
十二通の
文を
出して
元の
座へ
戻れば
お專は見てお
前裾に血が付て居るは如何なされしやと問はれて傳吉は
驚ながら
打返して見れば
裾裏所々に血の付て居る故是は
不思議なる事
哉昨夜河原にて物に
躓きけるを
など
打返し
其むかしの
恋しうて
無端に
袖もぬれそふ
心地す、
遠くより
音して
歩み
来るやうなる
雨、
近き
板戸に
打つけの
騒がしさ、いづれも
淋しからぬかは。