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應
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いら
一同これはと
恐れ
謹みけるに、
良ありて
幸豐公、
御顏を
斜に
見返り
給ひ、「
杢、
杢」と
召し
給へば、
遙か
末座の
方にて、
阿と
應へつ、
白面の
若武士、
少しく
列よりずり
出でたり。
横笛愈〻
心惑ひて、人の哀れを
二重に包みながら、浮世の義理の
柵に
何方へも一言の
應へだにせず、無情と見ん人の恨みを思ひやれば、身の
心苦しきも數ならず、夜半の夢
屡〻駭きて
將また、
千束の
文に
一言も返さざりし我が無情を恨み給はん時、いかに
應へすべき、など思ひ惑ひ、恥かしさも催されて、
御所を
拔出でしときの心の
雄々しさ、
今更怪しまるゝばかりなり。