のぶ)” の例文
のぶと言って、郷里くにから修行に出て来た森彦の総領——三吉が二番目の兄の娘である。この娘は叔父の家から電車で学校へ通っていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黒門町のおもとさん——それも行って聞きましたが、肝腎のお元さんは三年前に亡くなって、今は娘のおのぶさんが家業を継いでやっています。
抽斎の姉須磨すま飯田良清いいだよしきよに嫁して生んだむすめ二人ふたりの中で、長女のぶ小舟町こぶねちょう新井屋半七あらいやはんしちが妻となって死に、次女みちが残っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「君は自分の好みでおのぶさんをもらったろう。だけれども今の君はけっしてお延さんに満足しているんじゃなかろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「こんど、のぶが店をやってくれることになって、身体があいたから、ちょっと遊びにきたのさ」
野萩 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
長男の一郎と、長女の甲子と、次女の乙子と、夫人の里の遠縁の者の娘で甲子や乙子の世話をする養子ようこと、一郎の同級生の澤と、女中ののぶと鉄と、別荘番のじいやとばあやがいた。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
だが矢張川口町へ帰るつもりでしきりに急ぎましたが知れるといけません、い塩梅によし原の(芸者)おしめ、のぶしん、おなおなぞが、貴方の此処へ帰る事を知りませんから宜うございますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小買物にでも行ったらしい内儀のおのぶは、杉之助の前に三つ指を突いて、それから平次と八五郎にていねいに挨拶しました。
「こんどのぶが店をやってくれることになって、身体があいたからちょっと遊びにきたのさ」
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
抽斎の姉須磨すまの生んだ長女のぶの亡くなったのは、多分この年の事であっただろう。允成ただしげの実父稲垣清蔵の養子が大矢清兵衛おおやせいべえで、清兵衛の子が飯田良清いいだよしきよで、良清のむすめがこの延である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
念入ねんいり身仕舞みじまいをした若い女の口から出る刺戟性しげきせいに富んだ言葉のために引きつけられたものは夫ばかりではなかった。車夫も梶棒かじぼうを握ったまま、等しくおのぶの方へ好奇の視線を向けた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小買物にでも行つたらしい内儀のおのぶは、杉之助の前に三つ指を突いて、それから平次と八五郎に丁寧に挨拶しました。
夕方以後の彼は、むしろおのぶ面影おもかげを心におきながら外で暮していた。その薄ら寒い外から帰って来た彼は、ちょうど暖かい家庭の灯火ともしびを慕って、それを目標めあてに足を運んだのと一般であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男は用人の外に中間ちゅうげん、小者、庭掃にわはきの爺、女はお小間使のおのぶ、仲働きのお米、外にお針に飯炊き。
男は用人の外に中間、小者、庭掃にははきの爺、女はお小間使のおのぶ、仲働のお米、外にお針に飯炊き。