巨勢こせ)” の例文
そこで旧友の巨勢こせ博士を訪ねて、その意見をきくことにした。二人は一しょに同人雑誌をだしたことのあるそのかみの文学青年であった。
正午の殺人 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
吉田さんの『地名辞書』の索引などを見ると、巨勢こせとか能勢のせとか須磨すまとか那須なすとかいう類の二音の意味不明な地名が幾種もある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この竹取の絵は巨勢こせ相覧おうみの筆で、ことば書きは貫之つらゆきがしている。紙屋紙かんやがみ唐錦からにしきの縁が付けられてあって、赤紫の表紙、紫檀したんの軸で穏健な体裁である。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さだめなき空に雨みて、学校の庭の木立こだちのゆるげるのみ曇りし窓の硝子ガラスをとほして見ゆ。少女おとめが話聞く間、巨勢こせが胸には、さまざまの感情戦ひたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蘇我ノ蝦夷えみし平群へぐりしび、蘇我ノ赤魚あかお押返おさかえ毛屎けくそ阿曇あずみ蛍虫ほたる——などはまだよいが、巨勢こせ屎子くそこという女性がある。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士の中に巨勢こせ熊檮くまがしなる者、一九七きもふとき男にて、人々我があときて来れとて、一九八板敷いたじきをあららかに踏みて進みゆく。ちりは一寸ばかり積りたり。
巨勢こせ金岡かなおかもあります、光長も、信実のぶざねもあります、土佐もあります、雪舟せっしゅう、周文、三阿弥あみ、それから狩野家にも古法眼こほうげんがあります、その後に於ても探幽があり、応挙があり……
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
安倍、石川、大伴、巨勢こせら往昔名門の子弟たちも然るべき地位にすゝみ、さしもの藤原一門も一時朝政の枢機から離れざるを得なかつた。
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
巨勢こせ、「我画かくにもようあるべきものなり。『アトリエ』ととのはむ日には、よと伝へたまへ。」エキステル
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
武士のなかに巨勢こせ熊檮くまがしという大胆な男がいたが、「御一同、私のあとについておいでなされ」というと、板のをあらあらしく踏みならして、先に進んで行った。
巨勢こせとか、土佐とか、詫磨たくまとかいう日本の絵が出来ました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「マリイの君のゐ玉ふ処へ、たれか行かざらむ。人々も聞け、けふこの『ミネルワ』の仲間に入れむとてともなひたるは、巨勢こせ君とて、遠きやまとの画工なり。」
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
なお、三枚の切符のうち一枚は巨勢こせ博士のものだから、口説き落して、ムリムタイにでも同道たのむ。三拝九拝。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
秋子とあぐりとこれも同じ画学生の巨勢こせきそのといふ有閑婦人の三人が我物顔にアトリヱを占領してゐた。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
その暮方、私はちょうど小説を脱稿したので、久し振りに巨勢こせ博士の探偵事務所を訪ねた。
復員殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「これらの東西の文学書に一貫した共通性があるのかなア。それが分ると謎がとけるかも知れないが、ワタクシは文学のことは心得が浅いのでな。そうだ。ひとつ、巨勢こせ博士にきいてみよう」
選挙殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
十一時半ごろ巨勢こせ博士がきた。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)