嶮崖けんがい)” の例文
新たに起こってきたあらゆる反省によって、彼の不安は増していった。嶮崖けんがいが彼の周囲に現われてきた。彼は祖父とも友人らとも融和していなかった。
北の方嶮崖けんがいを下る八、九丁で、南穂高と最高峰とを連ねている最低部、横尾谷より来ると、この辺が登れそうに見えるがはなはだ危険だ、奥穂高と北穂高との間を通るがよい。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
人夫等岩崖をおほいで唯まゆひそむるあるのみ、心は即ち帰途にくにあればなり、此に於て余等数人奮発ふんぱつ一番、先づ嶮崖けんがい攀登はんとうして其のぼるを得べき事をしめす、人夫等なほがへんぜず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
どこかの山中の嶮崖けんがいを通る鉄道線路の夜景を見せ、最後に機関車が観客席に向かって驀進ばくしんするという甚だ物々しいふれだしのあった一景は、実は子供だましのようなものであった。
彦十の口から、この国土の主たる斎藤家の内争と、その悪行ぶりを聞いてから、ふたたび、城を仰ぎ見た時、その鉄壁も、嶮崖けんがい要害ようがいも、日吉の眼には、何の権威にも見えなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一見人工をくわへたる文珠菩薩に髣髴はうふつせり、かたはらに一大古松あり、うつとして此文珠いわへり、丘を攀登ばんとして岩下にちかづかんとするも嶮崖けんがい頗甚し、小西君および余の二人奮発ふんぱつ一番衆に先つてのぼ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
是より水上にいたらば猶斯の如き所おほきやひつせり、此に於て往路をりてかへり、三長沢口にはくし徐計をなすべしと云ひ、あるひただちに此嶮崖けんがいぢて山にのぼり、山脈をつたふて水源にいたらんと云ひ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)