屈原くつげん)” の例文
多くそのときの季節や月日にちなんだ話であった。彼岸ひがんのことや屈原くつげんについての小話があったのを覚えている。私を除いた三人の先生が話をした。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
西欧の詩人吾これをつまびらかにせず、東洋の古今ただ詩作家の少なからざるを見るのみ、真詩人の態度を得たるものあるを知らず、屈原くつげん陶潜とうせん杜甫とほ李白りはく
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
生きて甲斐かいない身の上だ、むかし春秋戦国の世にかの屈原くつげんも衆人皆酔い、我ひとめたり、と叫んでこの湖に身を投げて死んだとかいう話を聞いている
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
屈原くつげんいわく「聖人はよく世とともに推移す。」われらの道徳的規範は社会の過去の必要から生まれたものであるが、社会は依然として旧態にとどまるべきものであろうか。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
かねてぞ千葉ちばはなたれぬ。汨羅べきら屈原くつげんならざれば、うらみはなにとかこつべき、大川おほかはみづきよからぬひて、永代えいだいよりの汽船きせん乘込のりこみの歸國きこく姿すがた、まさしうたりとものありし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
周末戦国の時宋王が屈原くつげんを招魂する辞に、魂よ帰り来れ、東方には高さ千仭せんじんの長人ありて、人の魂をのみ食わんともとむ、また十日代る代る出て金を流し石をとかす、魂往かば必ずけん
屈原くつげん憂憤うっぷんを叙して、そのまさに汨羅べきらに身を投ぜんとして作るところの懐沙之賦かいさのふを長々と引用したとき、司馬遷にはその賦がどうしてもおのれ自身の作品のごとき気がしてしかたがなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
惸独けいどくにして不羣ふぐんなりと楚辞そじにあるが寒月君は全く明治の屈原くつげんだよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とぎれて聞える鐘の声は屈原くつげんが『楚辞そじ』にもたとえたい。
鐘の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
老子とその徒および揚子江畔自然詩人の先駆者屈原くつげんの思想は、同時代北方作家の無趣味な道徳思想とは全く相容あいいれない一種の理想主義である。老子は西暦紀元前四世紀の人である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)