寧子ねね)” の例文
彼女は、斯波しば家の臣、高島左京大夫のむすめで、利家にとついだのも、その仲人なこうどは、まだ小身時代の、秀吉寧子ねねの夫婦だったのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御母堂にも、寧子ねねどのにも、宵よりいたくお待ちかねでおられます。ともあれ奥へ渡らせられ、殿のおすこやかぶりもお見せ申しては」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そら、聟の藤吉郎が、寧子ねねと婚禮の式になるね。そこへ、前田犬千代や、惡友どもが、水かけ祝ひといつて、なだれ込んで來る。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねのことばが、余りきっぱりしていたので、老母は驚きの眼をみはり、やがて、その眼から、滂沱ぼうだとして、うれし涙をこぼしてしまった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上に、あの寧子ねねが、宿やどつまとなっていたら、申し分ないが——と思ったりしながら、今朝も、清洲城きよすじょう外濠そとぼりを歩いて来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど右府うふ様からもお迎えの使いがお見えなされて、久しぶりのことである、筑前が安土に参っておるゆえ、寧子ねね様を伴い
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と述べる彼の復命によると、秀吉の母堂と寧子ねね夫人などの眷族けんぞくは、ここから約十余里もある山奥にひそんでいるというのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——そうじゃ。あの前田犬千代どの、家がらもよい出だが、頻りと、人を介して、寧子ねねを妻にと、求めて来られるのじゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分が云われるよりも、良人の云われた場合に、寧子ねねは腹が立った。けれど良人は意にかけるふうもない。笑うのみである。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十六というと、寧子ねねも人知れず、「女の先」を考え始めた。時代は早婚の風である。もう他から結婚のはなしがいろいろ持込まれるのであった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねは良人の長い留守のあいだに、養父浅野又右衛門の家から、良人の家、桐畑の小さい屋敷のほうへ、すべての荷物と共に、引き移っていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねよ。そなただけぞや。このような打ちあけた古事ふるごとを語るのは。——生涯、あれに添うてくださる妻と思えばじゃ。あの子を、……いえのう。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば今、洲股すのまたの一城を、あっさり捨てきれるかといえば、決して捨てられない。可愛い寧子ねねを捨てられるかといえば、なおなお捨て得ない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねは内陣の陰で、しょく燧石ひうちっていたし、老母のすがたはただ一つ暮れ残ったもののように、聖観音の下にじっと祈りの姿をつづけている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、席のすそに、蒔絵まきえ銚子ちょうしを前において、白々と、灯にまたたかせている寧子ねねの顔を、穴のあくほど見入っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
来年のことを申すと、鬼が笑うそうですが、次の正月は、寧子ねねも共に、そこで春をお迎えするようになりましょう。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひと目、御覧に入れたく存じました。——明朝は連れ参ります。長浜の寧子ねねや老母にも、見せたいと思いますが」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、母上にも、どうぞ毎日を、今朝のごとく、おすこやかにお暮しくださいますように。……寧子ねねも、またしばらくの留守を、たのむぞ、たのむぞ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風がふくと、壁やうつばりの土がこぼれる。そうした本堂に、寧子ねねは老母にかしずいて住み、僧房のほうには、身内の幼い者や年寄や侍女たちを住まわせていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この釜をけて、一ぷくせよとのお旨であろう。寧子ねね、さっそくに懸けて、ありがたいお茶を一ぷく戴こうか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湖畔、ここから程近い、長浜を思いながら、久しくそこに留守している老母と、そして妻の寧子ねねへ宛ててである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「急ぐこともないから、よう生涯を考えて——」と、寧子ねねにも告げて、宿題の予日をのこし、親たちも先方へ、まだはっきり返辞をしない程度になっていた。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉をめぐる老母や、夫人の寧子ねねや、たくさんな近親たちが、どんなに、かれを迎えていることだろうか。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻の寧子ねねも四十に近い。一日家をあけても、妻はともあれ、老母は年が年なので、心にかかるものらしい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数日ののち、今浜から蜂須賀はちすか彦右衛門の一行が着いた。迎えの役としてである。老母と寧子ねね塗駕籠ぬりかごに乗せられた。前後についてゆく将士の装いも平和である。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、寧子ねねも、世間なみの妻のように、余りな良人のわがままや薄情らしい仕打ちに、つい、恨みがましい涙を見せたりすると、女の涙には至って弱い秀吉なので
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の母は、そこよりも高い位置の、置き畳のうえに坐り、寧子ねね夫人をそばにおいて、見物していた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はははは、遊びはとがめん。ひそかに、たまたまの桜狩など、大いによかろう。……しかし長浜で落ち合うてやるほどなら、なぜ、寧子ねねを呼んで会ってやらぬか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねの方では、どう思っているか知らないが、先の意志にかかわらず、藤吉郎は、寧子が好きだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして久しぶり、妻の寧子ねねや母や兄弟たちの許でふた夜をたのしく泊って来た帰り途であった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大政所おおまんどころの称位をい、妻の寧子ねね政所まんどころとして、内にも、内事ないじ調ととのえを、着々とすすませていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こちらの床几しょうぎへ参らぬか——あれへ寧子ねねも連れて来ておるで」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねね
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)