寝所しんじょ)” の例文
旧字:寢所
岡部伍長は、線一本引いてない方眼紙の上をにらみつけながら、丸刈まるがりのあたまを、やけにガリガリとかいて、寝所しんじょへ立った。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のこったものは殿とののご寝所しんじょのほうをまもれ、もう木戸きど多門たもんかためにはじゅうぶん人数がそろったから、よも、やぶれをとるおそれはあるまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愚僧は地上に落ち候まゝ、ほとんど気絶も致さむばかりにて、ようや起直おきなおり候ものゝ、烈しく腰を打ち、その上片足をくじき、ばいになりて人知れず寝所しんじょへ戻り候仕末。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「上様の寝所しんじょねらう怪しい者があると云うから、お前は今晩から寝所の外を見張ってもらいたい」
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と気がついて、清兵衛は、あたふたと、備前守びぜんのかみ寝所しんじょの外の戸のところへ立って
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
鎮守ちんじゅ八幡でも、乞食の火が険呑けんのんと云うので、つい去年拝殿に厳重な戸締りを設けて了うた。安さんの為に寝所しんじょが一つ無くなったのである。それかあらぬか、近頃一向安さんの影を見かけなくなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
帆村荘六も、このマスクを怪塔王の寝所しんじょかたわらに発見したときは生首なまくびが落ちている! と思って、どきっと心臓がとまりそうになったほどである。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ガバとはね起きた石見守いわみのかみ大久保長安おおくぼながやすは、悪夢あくむにおびやかされたように、枕刀まくらがたなを引ッつかむなり、桜雲台本殿おううんだいほんでん自身じしん寝所しんじょから廊下ろうかへとびだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病気でないばかりか夜中やちゅう時どき寝所しんじょから姿を消して、黎明方よあけがたでないといないことさえあった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ありがとう存じまする。ま、今夜はだいぶお疲れでもございましょうから、ひとまずどうぞご寝所しんじょの方へ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、その時、寝所しんじょ南縁なんえんの月の光のしている雨戸がかすかな音を立てていた。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ざんねんだが、咲耶子さくやこのすがたが見当みあたらなければぜひもない。このうえは、どうせのついでに、大久保長安おおくぼながやす寝所しんじょを見つけて、きゃつの首を土産みやげに引きあげよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)