定紋ぢやうもん)” の例文
金で大きく蓋の上に定紋ぢやうもんの折鶴を現はした手匣とともに、今は亡き父の記念品かたみとなつて、病院の枕元に置かれてある。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やはらげ相摸殿よくうけたまはられよ徳川は本性ほんせいゆゑ名乘申すまたあふひも予が定紋ぢやうもんなる故用ゆるまでなり何の不審ふしんか有べきとのことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その死骸の側に蟻地獄野郎の定紋ぢやうもんの金具をつけた、煙草入があつたんだから、文句はないでせう。
緋の羽二重に花菱の定紋ぢやうもんを抜いた一対の産衣うぶぎへばんではるが目立つてなまめかしい。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
まあ、申さば、内裏雛だいりびな女雛めびなの冠の瓔珞やうらくにも珊瑚さんごがはひつて居りますとか、男雛をびな塩瀬しほぜ石帯せきたいにも定紋ぢやうもんと替へ紋とが互違ひにひになつて居りますとか、さう云ふ雛だつたのでございます。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
通り懸りけるに山下の溷際どぶぎは深網笠ふかあみがさの浪人者ぼろ/\したる身形みなりにて上には丸に三ツ引の定紋ぢやうもんつきたる黒絽くろろほたるもるばかりの古き羽織を着しうたひをうたひながら御憐愍ごれんみんをと云て往來の者に手の内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
始として兩御目付三奉行諸有司しよいうし小役人にいたるまで皆其家々の定紋ぢやうもん付きたる箱提灯はこぢやうちんとぼし立行列正しく評定所へ出席せられ威儀ゐぎ嚴重げんぢうに列座さるゝ有樣實にや日本の政所まんどころくもらぬ鏡の天下の善惡邪正じやしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)