字面じめん)” の例文
魔法の類ではない。妖術幻術というはただ字面じめんの通りである。しかし支那流の妖術幻術、印度流の幻師の法を伝えた痕跡はむしろ少い。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この年六月七日に成善は名をたもつと改めた。これは母をおもうが故に改めたので、母は五百いお字面じめんならざるがために、常に伊保と署していたのだそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ゑがかれた無論むろん冒險者アドヹンチユアラー字面じめんゆる範圍内はんゐないで、もつとつよ色彩しきさいびたものであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
八景といふ字面じめんたうあたりからある、イヤ景色に八ツを取立てゝいつたのは南齊なんせい沈約しんやくの八詠樓など、或はもつと古いところにあるか知らぬが
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あれは多紀茝庭たきさいていの命じた名だということが、抽斎と森枳園もりきえんとの作った序に見えており、訪古の字面じめんは、『宋史そうし鄭樵ていしょうの伝に、名山めいざん大川たいせんあそび、奇を捜しいにしえを訪い、書を蔵する家にえば、必ず借留しゃくりゅう
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また、蘇東坡そとうばが種〻の食物をまじて、これを骨董羮こっとうかんといった。その骨董は零雑れいざつの義で、あたかもわが邦俗ほうぞくのゴッタ煮ゴッタ汁などというゴッタの意味に当る。それも字面じめんには別に義があるのではない。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
抽斎はかつて自ら法諡ほうしを撰んだ。容安院ようあんいん不求甚解居士ふきゅうじんかいこじというのである。この字面じめんは妙ならずとはいいがたいが、余りに抽象的である。これに反して抽斎が妻五百いおのために撰んだ法諡は妙きわまっている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)