嫣然にこり)” の例文
お才も嫣然にこり歯を見せつ「だがネ、彼妓あのこの剛情にも因つて仕舞しまふのねエ、口の酸つぱくなる程言つて聞かせるに、松島さんの妾など真平まつぴら御免テ逃げツちまふんだもの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
雀斑そばかすがぽち/\してつとこまでなあ」おしなにははなのあたりに雀斑そばかすすこしあつたのである。おつぎにもれがそのまゝ嫣然にこりとするときにはそれがかへつしなをつくらせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
叔母は嫣然にこりともせずに、簡単な答を落ちついて与えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お浪は嫣然にこりともしなかった。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
にくらしいことまあ、惡戯いたづらばかして」おつぎは嫣然にこりとしてうしろた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そんぢやだれだんべ、せんな」女房にようばうつたまゝどう見廻みまはして嫣然にこりとしていつた。それでもしばらくはすべてがくちつぐんでた。巫女くせよせばあさんははこつゝんだ荷物にもつそのまゝ自分じぶんひざきつけてつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)