にく)” の例文
鴎外は甘んじて死んだ。予は決して鴎外の敵たる故を以て諸君をにくむものではない。明治三十三年一月於小倉稿。(明治三十三年一月)
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
聖母のわがあだし心を懷けるをにくみ給はむかとあやぶみ、聖母に向ひて罪を謝し、あはれなる子に慈悲の眸を垂れ給へと願ひき。
勘次かんじ小屋こや卯平うへい鹽鮭しほざけにほひいでは一しゆ刺戟しげきかんずるととも卯平うへいにくむやうな不快ふくわいねんがどうかするとつひおこつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「多くの人はわれに対して悪を施さんと欲す。同時に吾の、彼らを目して凶徒となすを許さず。またその凶暴に抗するを許さず。いわく。命に服せざれば汝をにくまんと」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とうとう互ににくみ合う元素が
かく自分と一族とを赦免しやめんして貰ひたい。それから西組与力見習よりきみならひ内山彦次郎うちやまひこじらうと云ふものがある。これは首領ににくまれてゐるから、保護を加へて貰ひたいと云ふのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
自分は器量好しが二人寄って、我知らず互ににくみ合うのだろうと説明した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
有信は旗本伊沢の家に妾腹の子として生れた。然るに父の正室が妾をにくんで、害を赤子せきしに加へようとした。有信の乳母にゆうぼおそれて、幼い有信を抱いて麻布長谷寺ちやうこくじに逃げかくれた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)