あやし)” の例文
流れる水と、自分の恋と、電燈の輝きで美しい夜の大阪とを考えの中で比較してみると自分が、自分にあやしまれてくるほどおかしなものであった。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
使あやしみながら彼のみたちきて、其のよしをいひ入れてうかがひ見るに、あるじの助をはじめ、令弟おとうとの十郎、二八家の子掃守かもりなど居めぐりて酒を酌みゐたる。師が詞のたがはぬをあやしとす。
さすがに持扱もてあつかひて直行の途方に暮れたるを、老女は目をほそめて、何処いづこより出づらんやとばかり世にもあやしき声をはなちてゆるく笑ひぬ。彼は謂知いひしらぬ凄気せいきに打れて、覚えず肩をそびやかせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
熒惑けいわく明らかならざればすなわち兎を生む〉とあやしい説を引き居る。
さはへ、人の親の切なるなさけを思へば、にさぞと肝にこたふる節無ふしなきにもあらざるめり。大方かかる筋より人は恨まれて、あやしわざはひにもふなればと唯思過ただおもひすごされては窮無きはまりな恐怖おそれの募るのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かつて聞かざりし恋人が身の上の秘密よ、と満枝はあやしき興を覚えて耳を傾けぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)