太脛ふくらはぎ)” の例文
とひょいと立つと、端折はしょった太脛ふくらはぎつつましい見得みえものう、ト身を返して、背後うしろを見せて、つかつかと摺足すりあしして、奥のかたへ駈込みながら
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ一重の布も、膝の下までは蔽わないで、小股をしめて、色薄くくびりつつ、太脛ふくらはぎが白くなめらかにすらりと長くながれに立った。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飄然ひょうぜんとして橋を渡り去ったが、やがて中ほどでちょっと振返って、滝太郎を見返って、そのまま片褄かたづまを取って引上げた、白い太脛ふくらはぎが見えると思うと、朝靄あさもやの中に見えなくなった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
居屈いかがみしに、はばかりさまやの、とてもすそを掲げたるを見れば、太脛ふくらはぎはなお雪のごときに、向うずね、ずいと伸びて、針を植えたるごとき毛むくじゃらとなって、太き筋、くちなわのごとくにうねる。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいながら土手に胸をつけて、そでを草に、太脛ふくらはぎのあたりまで、友染ゆうぜん敷乱しきみだして、すらりと片足片褄かたづまを泳がせながら、こううち掻込かきこむようにして、鉛筆ですらすらとその三体さんたいの秘密をしるした。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
太脛ふくらはぎから曲げて引上げるのに、すんなりと衣服きものつまを巻いて包むが、療治をするうちには双方の気のたるみから、かかと摺下ずりさがって褄が波のようにはらりと落ちると、包ましい膝のあたりから、白い踵が
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)