大黒柱だいこくばしら)” の例文
千葉家ちばけふて大黒柱だいこくばしら異状いじやうつては立直たてなほしが出來できぬ、さうではいかと奧樣おくさまくらべてへば、はッ、はッ、とこたへてことばかりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お兄様は、玄関の太い黒光りのする大黒柱だいこくばしらりかかって、肋骨の附いた軍服のまま、奥へも行かずに立っていられます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
囲炉裏の間ともとは台所であったらしい部屋とのあいだには大きな柱が立っていて、大黒柱だいこくばしらと向い合いになっている。その柱をこの辺で、うし柱といっている。
見ると、夫は何か独語ひとりごとを言いながら、黒光りのする大黒柱だいこくばしらの前をったり来たりしていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まっくらな家の中を、人々は盲のように手でさぐりながら、水甕みずがめや、石臼いしうす大黒柱だいこくばしらをさぐりあてるのであった。すこしぜいたくな家では、おかみさんが嫁入よめいりのとき持って来た行燈あんどんを使うのであった。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あらそひ入り來る故實に松葉屋の大黒柱だいこくばしら金箱かねばこもてはやされ全盛ぜんせいならぶ方なく時めきけるうちはや其年も暮て享保七年四月中旬なかば上方かみがたの客仲の町の桐屋きりやと云ふ茶屋より松葉屋へあがりけるに三人連にて歴々れき/\と見え歌浦うたうら八重咲やへざき幾世いくよとて何も晝三ちうさん名題なだい遊女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)