大甕おおがめ)” の例文
兵士たちは広場から運んだ裸体の鹿を、地中に埋まった大甕おおがめの中へ塩塊えんかいと一緒に投げ込むと彼らはその上で枯葉をいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
大甕おおがめ、酒甕、捏鉢こねばち徳利とっくり花立はなたてつぼ、これが広っぱに山のように積んである。博多はかたあたりの町を歩いて必ず荒物屋にあるのは、皆ここから供給される。
北九州の窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
また茶店の朱貴は、大甕おおがめ十箇の酒をあけ、三頭の黄牛あめうしをつぶし、ぞんぶんに大勢の腹を賑わした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見まわす土間、狭いから一だ。古い道具やら空箱の類が積んである奥に、小窓を洩れる薄陽の縞を受けて二つ並んだ染料の大甕おおがめ、何を思ったか藤吉、転がるように走り寄って覗き込んだ。
磐城いわき相馬郡大甕おおがめ村大字しずく遠摸志とおぼし
しかしこの窯のことが私の心を異常に引くようになったのは、もう八、九年も前に村岡景夫君と長崎を旅した時、とある骨董店こっとうてんのうす暗い一隅に大甕おおがめを見出した時からです。
多々良の雑器 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かけひの注いでいる大甕おおがめのかたわらへ寄って、自身小桶をつかんでりのたらいにそれを汲み入れ、まるで鶺鴒せきれいのようにあたりを水だらけにしながら、せっかちに顔を洗いぬいていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人夫が碑の下を発掘したところが地下から備前焼の大甕おおがめが出て来て、甕の石ブタを取りけてみると、端坐した人間が、在世の姿のまま澄んだ水にひたっていたという話が残っている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが石見のこれらの窯では赤瓦のみではない、大甕おおがめを焼き、捏鉢こねばち、すり鉢、べに鉢、片口かたくち、壺類を焼く。厖大ぼうだいな窯であるからそれも多量に焼く。なかんずく来待石きまちいしを使った赤褐色の大甕が多い。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
長光寺城一砕の大甕おおがめも、ここに至っては、可惜あたら、何の精彩せいさいも見ることはできない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此処で私たちは三尺大の大甕おおがめや、その他鉄金具、丸彫まるぼりのパカチなど幾種かを求めた。発送は面長の厚誼こうぎを受けた。面の役所は古い李朝代の立派な建物で、前に幾多の善政碑が並ぶのは見ものであった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)