大手おおで)” の例文
画工 (あふりたるの手を離るゝと同時に、大手おおでひらいて)う成りや凧絵だ、提灯屋ちょうちんやだ。そりや、しやくるぞ、水むぞ、べつかつこだ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんのという気で大手おおでを振って帰ってきた省作も、家に来てみると、家の人たちからはお前がよくないとばかり言われ、世間では意外に自分を冷笑し
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
いながら、大手おおでをひろげました。そこでうさぎと、さると、鹿しかと、いちばんおしまいにくまがかかっていきましたが、かたっぱしからころころ、ころがされてしまいました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
純情家ベルリオーズは、大手おおでひろげて彼女を受けいれたことは言うまでもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
えくぼせないのはまだしも、まるで別人べつじんのようにせかせかと、さきいそいでの素気すげない素振そぶりに、一どう流石さすがにおせんのまえへ、大手おおでをひろげる勇気ゆうきもないらしく、ただくちだけを達者たっしゃうごかして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
三人は、右、左、まん中と、三方にわかれて、大手おおでをひろげてすすんでゆきました。そして、部屋じゅうを、のこるところなく、さぐりまわったのですが、何も手にさわるものはありません。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それをお母さん、ちゃんと察して、私に用事を言いつけて、私に大手おおでをふって映画見にゆけるように、しむけて下さった。ほんとうに、うれしく、お母さんが好きで、自然に笑ってしまった。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「源蔵殿、御免下され」にて懐紙を出し、顔に当てて大手おおでに泣く。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
と、大手おおでをひろげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これからは大手おおでをふって、二十面相の活動をはじめるんだ。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)