大弐だいに)” の例文
大弐だいにの娘の五節ごせちは、一人でしていた心の苦も解消したように喜んで、どこからとも言わせない使いを出して、二条の院へ歌を置かせた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
古来から宇治十帖うじじゅうじょう紫式部むらさきしきぶむすめ大弐だいに三位さんみの手になったといわれていた。徳川期の国学者は多くそれを否定した。私も昔はそうかと思わせられた。
清盛は晩年に出家して入道にゅうどうとなっている。一般の先入主では、平太へいた清盛だの、大弐だいに清盛だの、参議清盛などと時代別に呼ばれるよりも浄海入道じょうかいにゅうどうのほうが通りがいい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
資通大弐だいに、この琵琶をくに調べ得ず、その父済政なりまさ、今日この琵琶ひがめり、弾くべからざる日だと言うた、経信白川院の御遊に、呂の遊の後律に調べるについに調べ得ず、古人のいう事
不届ノいたり、殊ニ其方共ノうったえヨリ、大勢無罪ノモノまで入牢イタシ、御詮議ニ相成リ、其上無名ノ捨訴状すてそじょう捨文すてぶみ有之これあり、右したため方全ク其方共ノ仕業しわざニ相聞エ、重科じゅうかノ者ニ付死罪申付もうしつくベキ者ニ候ところ大弐だいに
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんな機会がまた作られたならば、大弐だいに五節ごせちに逢いたいと源氏は願っていたが、五節の訪問も実現がむずかしいと見なければならない。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御当家の城普請しろぶしんや造船や、また火薬兵器の御用意などが、着々とすすむにつれて、筑後柳川ちくごやながわの諸藩をはじめ、京都の中心はもとよりのこと、江戸表の大弐だいになどもしきりに、ひそかな兵備を
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏が六条に恋人を持っていたころ、御所からそこへ通う途中で、だいぶ重い病気をし尼になった大弐だいに乳母めのとたずねようとして、五条辺のその家へ来た。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
土岐伯耆ほうき、芦名ノ判官、三浦若狭わかさ、千田太郎、じょう大弐だいに結城ゆうき七郎、小田の常陸ノ前司ぜんじ、長江弥六左衛門、長沼駿河守、渋谷遠江守、伊東前司、狩野七郎、宇佐美摂津ノ判官、安保あぼの左衛門
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大弐だいにの夫人の贈った衣服はそれまで、いやな気がしてよく見ようともしなかったのを、女房らが香を入れる唐櫃からびつにしまって置いたからよい香のついたのに
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのうちに叔母の良人おっとが九州の大弐だいにに任命された。娘たちをそれぞれ結婚させておいて、夫婦で任地へ立とうとする時にもまだ叔母は女王を伴って行きたがって
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大弐だいに夫人に小言こごとを言われて、侍従は夢中で車に乗ってしまった。そしてあとばかりが顧みられた。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
このころに九州の長官の大弐だいにが上って来た。大きな勢力を持っていて一門郎党の数が多く、また娘たくさんな大弐ででもあったから、婦人たちにだけ船の旅をさせた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左衛門さえもん乳母めのとといって、源氏からは大弐だいにの乳母の次にいたわられていた女の、一人娘は大輔たゆう命婦みょうぶといって御所勤めをしていた。王氏の兵部ひょうぶ大輔である人が父であった。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大弐だいにから贈られてあった原料の香木類を出させてみたが、これよりも以前に渡って来た物のほうがあるいはよいかもしれぬという疑問が生じて、二条の院の倉をあけさせて
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大弐だいにの奥様でなければ、この大和の長官の夫人にしていただきたいと思います。それが事実になりまして、私どもにも幸福が分けていただけました時に厚くお礼をいたします
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
与えるものだからね。あちらへ行って大弐だいにに、薄物の単衣ひとえを縫って来るように命じるがいい
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
辰の日の夕方に大弐だいにの五節へ源氏は手紙を書いた。内容が想像されないでもない。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左右に分けられたのである。梅壺方は左で、平典侍へいてんじ、侍従の内侍、少将の命婦などで、右方は大弐だいにの典侍、中将の命婦、兵衛ひょうえの命婦などであった。皆世間から有識者として認められている女性である。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)