大嵐おおあらし)” の例文
その時は冬の事で、サア出帆した所が大嵐おおあらし、毎日々々の大嵐、なか/\茶椀にめしもって本式にべるなんと云うことは容易な事ではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
辰雄は躊躇ちゅうちょしたが、そんなこと云うてる場合やあれしませんで、………この大嵐おおあらしに小泉さんとこかて起きてはりますがな、と、鶴子が云うと
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まるで、ねやを共にする男へなんぞの色気いろけは、大嵐おおあらしの中へき飛ばしたかのように、自分一人で涙を楽しんでいる風なのだ。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
二百十日の大嵐おおあらしにたとえて百姓らの恐怖する「例幣使さま」の通行ほど、当時の社会における一面の真相を語るものはない。それは脅迫と強請のほかの何物でもない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
立っているところは、つき立った岩の上で、もくらむほど下の方に、白雲しろくも黒雲くろくもとがき立って、なにも見えませんでした。つめたい風がきつけてきて、今にも大嵐おおあらしになりそうでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この大嵐おおあらしは佐竹の原の中のすべてのものを散々な目に逢わせました。
自分はお十夜の眼からのがれるため、わざとこの松原に姿を隠し、もし矢走やばせへ出る渡船わたしがあったら、草津あたりで宿をとろうと考えている間に、今夜の大嵐おおあらしに逢って退きならなくなったのだけれど
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
写本『温古新聞記』に曰く「八月十日前夜通し大降りにて今朝北風にて大降四ツ時頃風替り南に相成り大嵐おおあらしに相成る。天保四年巳八朔はっさくの大嵐より此方の大荒のよし所々破損多分有之これあり。昼後より晴。日当り又曇り、大風吹き夕七ツ時前又々雨降り雷鳴致す也。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
百姓らが二百十日の大嵐おおあらしにもたとえて恐怖していたのも、またその勅使代理の一行であった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
如何どうしたのかと思うと、前夜の大嵐おおあらしで、袋に入れて押入おしいれの中に積上げてあった弗、さだめしじょうおろしてあったに違いないが、はげしい船の動揺で、弗の袋が戸を押破おしやぶって外に散乱したものと見える。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)