大喝たいかつ)” の例文
小者たちがそう云うと、六郎兵衛が大喝たいかつし、腕を押えていた二人が左右へはねとばされ、そして六郎兵衛は刀を抜いた。
兄が何か反古ほごそろえて居る処を、私がドタバタ踏んで通った所が兄が大喝たいかつ一声、コリャ待てとひどしかり付けて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
貞之進はじっとその男の顔を瞻詰みつめて、しきりに唇を顫わしていたが、大喝たいかつ一声いっせい、何ッと言放した音の鋭かったことは、それまでに顕われた貞之進の性行を
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
長身の痩せ型の男は、巡査の大喝たいかつを聞くと、そのまま足を停めた。そして難なく腕を捕えられてしまった。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次がいきなり大喝たいかつすると、権八は雷鳴かみなりに打たれたように、がばと身を起して居住いを直しました。
海老塚医師は大喝たいかつ一声、右腕をハッシと突きだして、木ベエの横顔を突き刺すように、指さした。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
朝起きるから寝るまで叱言こごとである。歩き方がいけない、坐り方が悪い。かわやの出這入りから眠っている間でも寸分の油断はできない。時には、大喝たいかつを浴び、横顔へ平手を喰う。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたんに、右門がわれ鐘のような大声で大喝たいかつしたのと、ちかり龕燈のあかりをその鼻先へ不意につきつけたのと同時でした。術は老雲斎先生のことばどおり、うれしくも破れました。
遠藤君大塚君等大に人夫等をさとせどもつひに長く决せず、吉田警察署長大喝たいかついかりて曰く、余等県知事のめいを奉じて水源探究たんきうに来れるなり、水流をさかのぼり水源をきはめざればすとも帰らず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
大喝たいかつした左膳の言葉は剣裡けんりに消えた。息をもつがせず肉迫した栄三郎が、足の踏みきりもあざやかに跳舞して上下左右にヒタヒタッ! とつけ入ってくるからだ。剣に死んでこそ剣に生きる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
忠之、「如水公の時屡々武功あったと云うが老耄おいぼれたのか」と罵って之を斬ろうとする処に弟隆政現れて漸く止めた。睡鴎暫く四方を観望して居たが、忽ち大喝たいかつして軍を進めついに大江門を抜いた。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「待て!」と浪人は大喝たいかつした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
血相ではどんな大喝たいかつが出るかと待っていると、孫太夫の手の甲が、その眼を抑えた。はらはらと落涙しているのである。五十六歳にもなる男が——武士が——泣いているのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大喝たいかつした者がある。突然うしろで……
しかも、抜くや同時に大喝たいかつ
いのちのおしいやつはどけッ!」と大喝たいかつした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と軍団長が大喝たいかつした。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
と、大喝たいかつした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)