かえ)” の例文
旧字:
大体につきてこれを思うに、人界に触れたる山魅人妖さんみじんよう異類のあまた、形を変じ趣をこそかえたれ、あえて三国伝来して人をかしたるたぐいとは言わず。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな場所ではちょっと身体からだの位置をかえるのさえ臆劫おっくうそうに見える肥満な彼は、坐ってしまってからふと気のついたように、半分ばかり背後うしろを向いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仰山ぎょうさんな声を立て顔色をかえて逃廻ったが、新吉は平気で指でつまんで縁側から捨てた。彼は決して殺さなかった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
見舞かた/″\鎌倉へ来て母にこの事を話しますと、母はの色をかえて、山口などへ寄るなと言います。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
母はわたくしに名前をかえるとか、何とか方法を考えて、もう一度ダンサアになるか。それともつゆ子さんのように女給さんになったほうが安全ではないかと言います。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このあたりの夜店を見歩いている人達の風俗にならって、出がけには服装みなりかえることにしていたのである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
欧洲の乱が平定し仏蘭西フランスの国土が独逸人ドイツじんの侵略からわずかに免れ得た時、わたくしは年まさに強仕きょうしに達しようとしていた。それより今日に至るまで葛裘かっきゅうかえること二十たびである。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)