壮健たっしゃ)” の例文
旧字:壯健
私はこのように壮健たっしゃですけれど、イサクは肺病と胃癌とですっかり体を痛めて了って余命少くなったこととが其原因でございます。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
母がまだ壮健たっしゃでいる時、「宗蔵の身体には梅の花が咲いた」などと戯れて、何卒どうかして宗蔵の面倒を見て死にたい、と言いとおした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
嘉悦孝子かえつたかこさんの女子商業学校を卒業した姉娘だけは、小柄ではあるが壮健たっしゃなように見えたが、下のS子とM子とは、何となく弱々しく見えていた。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
ねえさんはお壮健たっしゃですかとお前さんを聞くよ、情愛があるから……それから屡々ちょく/\遊びに行って何時も御馳走に成って済まないとたまには何か奢ってやるね
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのお婆さんは六十五、六ですけれどもなかなか壮健たっしゃで山をけ歩くことが出来ます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お前さんもお壮健たっしゃで結構でございます、わたくしもまた、あれから、お前さんと別れましてからは、下総国小金ヶ原の一月寺というのへ行っておりましたが、一月寺におりますうちに
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
七左 壮健たっしゃとも、機嫌は今日のお天気でえす。早う行って逢いなさい。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壮健たっしゃだった時分をいとおしむような調子で、病人は語り出した。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
しばらくのお別れでございます。なにとぞなにとぞお師匠様にはまた逢う時までお壮健たっしゃに、お体をおいとい遊ばすよう常陸お願い申し上げまする
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長いこと家に居なかった実叔父は壮健たっしゃで帰って来ている。森彦叔父は山林事件の始末をつけて、更に別方面へ動こうとしている。三吉叔父も、ようやく山から持って来た仕事をまとめた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
病気をしたことのない者には、壮健たっしゃで無事でいることの有難味がわからない。
月「おっかさんは何時いつ壮健たっしゃだねえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それでは壮健たっしゃで参られよ。今に到ってあらためて申し上げるほどのこともない。ただ身体を気をつけられい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お種がここへかたづいて来た頃は、三吉も郷里の方に居て、まだ極く幼少おさなかった。その頃は両親とも生きていて、老祖母おばあさんまでも壮健たっしゃで、古い大きな生家さと建築物たてものが焼けずに形を存していた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それじゃ、どのみちこの絵図面は貰っておこう。しかし、これに手をつけるようじゃあ、がんりきもやっぱり畳の上では死ねねえ。それじゃ兄貴、これから出かけるから、壮健たっしゃでいてくれ」
やっぱり六十を過ごしていたが殺された老人とは似も似つかず脂肪あぶらぎっていかにも壮健たっしゃそうだ。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「相変らず壮健たっしゃで結構だな」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
甥御はお若くてお壮健たっしゃですのに閣下は六十を越して居られ、それに御病弱でございます。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「若いに似合わぬ壮健たっしゃの足並み、私の方が遅くれますわい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)