壁代かべしろ)” の例文
板敷の間に七八床畳とこだたみを設けて、七九几帳きちやう八〇御厨子みづしかざり八一壁代かべしろの絵なども、皆古代こだいのよき物にて、八二なみの人の住居ならず。
壁と言ふよりは、壁代かべしろであつた。天井から吊りさげた竪薦たつごもが、幾枚も/\ちぐはぐに重つて居て、どうやら、風は防ぐやうになつて居る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
板敷の間に床畳とこだたみを設けた室で、几帳御厨子きちょうみずしかざり壁代かべしろの絵なども皆古代のもので、なみの人の住居ではなかった。真女児は豊雄に御馳走ごちそうした。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
壁代かべしろのやうな焔を後にして、娘の肩に縋つてゐるのは、堀河の御邸に繋いであつた、あの良秀と諢名のある、猿だつたのでございますから。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何げなく主膳はさかいの唐戸からとを開けた。が、壁代かべしろが垂れていてどちらの姿もよく見えないのでなお一ばい大きく開けた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
壁代かべしろ屏風びょうぶ几帳きちょう、帳台、昼の座席なども最も高雅な、洗練された趣味で製作させるように命じてあった。
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
壁代かべしろのやうな焔を後にして、娘の肩にすがつてゐるのは、堀河の御邸に繋いであつた、あの良秀と諢名あだなのある、猿だつたのでございますから。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
壁と言うよりは、壁代かべしろであった。天井から吊りさげた竪薦たつごもが、幾枚も幾枚も、ちぐはぐに重って居て、どうやら、風は防ぐようになって居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
良正、良兼、はじめ、人々はようやく、あたりの杯盤の粉々になっているのや、仆れている壁代かべしろなどに気がついて——自分の鼻血を袖で拭いたりした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のほかにだれがその仕度したくに力を貸すものがあろうと思いやって、御帳みちょうけ絹、壁代かべしろなどというものは、三条の宮の新築されて移転する準備に作らせてあったから
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この座敷は板敷いたじき床畳とこだたみを用意してあり、几帳きちょう御厨子みずしなどの部屋の調度のかざりといい、壁代かべしろの絵といい、みんな時代のついた由緒ありそうな品で、とうてい身分のない人の住居ではない。
壁代かべしろの様に縦横に裁ちついで、其まゝ身に纏ふやうになさる外は御座らぬ。それ、こゝに紐をつけて肩の上でくりあはせれば、昼は衣になりませう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
耳盥みみだらいに湯をといいつける。調ととのうと、几帳きちょう壁代かべしろで注意ぶかく風ふせぎを立て、彼女は、義貞に肌をぬがせた。そして、熱いしぼりで義貞の背やわきを拭きまわった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南の御殿の西の離れ座敷に賀をお受けになる院のお席が作られたのである。屏風びょうぶ壁代かべしろの幕も皆新しい物でしつらわれた。形式をたいそうにせず院の御座に椅子いすは立てなかった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
壁代かべしろの様に縦横に裁ちついで、其まま身にまとうようになさる外はおざらぬ。それ、ここにひもをつけて、肩の上でくくりあわせれば、昼は衣になりましょう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そして、まだ秋の蚊うなりもする、うすぐらいすみの壁代かべしろを横に、他念ない経盛の、机の姿へ向かって、さんざん、腹のムシャクシャを、腹の中だけで、たたきつけていたのだった。
彼女自身、壁代かべしろに寄せかけて置いた白木の檀弓まゆみをとり上げて居た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼女自身、壁代かべしろに寄せかけて置いた白木の檀弓まゆみをとり上げて居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)