ふた)” の例文
「我が身は成り成りて、成り餘れるところ一處あり。かれこの吾が身の成り餘れる處を、汝が身の成り合はぬ處に刺しふたぎて、國土くに生み成さむと思ほすはいかに」
折しもたれならん、階子はしご昇来のぼりくる音す。貫一は凝然として目をふたぎゐたり。紙門ふすまけて入来いりきたれるはあるじの妻なり。貫一のあわてて起上るを、そのままにと制して、机のかたはらに坐りつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
平素思っている事を秩序なく弁じ出して当面のせめふたぐというに過ぎないのです。
亜米利加の思出 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
高行くはひたすら悒鬱さぶしまかがやき横たふ雲の眼をふたぎつつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おそるゝか死を。——のどふた
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「吾が妊める子、もし國つ神の子ならば、こうむ時さきくあらじ。もし天つ神の御子にまさば、幸くあらむ」とまをして、すなはち戸無し八尋殿を作りて、その殿内とのぬちに入りて、はにもちて塗りふたぎて
満枝はまゆげて詰寄せたり。貫一は仰ぎてまなこふたぎぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
毛の荒物あらもののことごとに道ふた
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おそるゝか死を。——のどふた
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)