堀川ほりかわ)” の例文
鰻谷は嫌いだから今日はよそうとその日はやめにした。翌日になると細君がまた新聞を持って来て今日は堀川ほりかわだからいいでしょうと云う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の友だちは堀川ほりかわという小説家志望の大学生である。彼等は一杯の紅茶を前に自動車の美的価値を論じたり、セザンヌの経済的価値を論じたりした。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
土佐とさ高知こうち播磨屋橋はりまやばしのそばを高架電車で通りながら下のほうをのぞくと街路が上下二層にできていて堀川ほりかわ泥水どろみずが遠い底のほうに黒く光って見えた。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「お寺さん」という綽名あだなはそれと知らずにつけられたのだが、実は寺田の生家は代々堀川ほりかわの仏具屋で、寺田のよめ商売柄しょうばいがら僧侶そうりょむすめもらうつもりだったのだ。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
これは二百年近く古い書に見えているはなしである。京都は堀川ほりかわ金八きんぱちという聞えた道具屋があった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それほどこの新開地に内外人の借地の請求が頻繁ひんぱんとなって来た意味を通わせた。大岡川おおおかがわ川尻かわじりから増徳院わきへかけて、長さ五百八十間ばかりの堀川ほりかわ開鑿かいさくも始まったことを語った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
京都に着いて三日目に、高尾たかお槇尾まきのお栂尾とがのおから嵐山あらしやまの秋色を愛ずべく、一同車をつらねて上京の姉の家を出た。堀川ほりかわ西陣にしじんをぬけて、坦々たんたんたる白土の道を西へ走る。丹波から吹いて来る風が寒い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ソシテ四条堀川ほりかわカラ東行スル電車ニ乗ッタ。………僕ガ帰宅シタ約一時間後ニ妻モ帰宅シタ。妻ノ耳ニハモウアノ真珠ガ下ッテイナカッタ。多分アノハンドバッグノ中ニ入レテアルノデアロウ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
三上は、伝馬を押して、一度神奈川かながわ沖まで出たが、また引きかえして、堀川ほりかわへはいった。彼は神奈川沖へ出た時に、伝馬にペンキで書かれてあった万寿丸を、シーナイフで削り取ってしまった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
しかし、久しぶり心は明るく、堀川ほりかわ百首のうちの
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちの前を流れている濁った堀川ほりかわに沿うて半町ぐらい上ると川は左に折れて旧城のすその茂みに分け入る。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
兵火の起こったのはこくのころであったが、おりから風はますます強く、火の子は八方に散り、東は高瀬川たかせがわから西は堀川ほりかわに及び、南は九条にまで及んで下京のほとんど全都は火災のうちにあった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
堀川ほりかわ君。」
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)