四川しせん)” の例文
「おいおい、子供の欲しい御婦人なら鹿宝ろくほうがいいだろう……これは四川しせんから来たんで、鹿の胎子はらご丸薬がんやくにしたもので御座いますがね」
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
著者の甥の致華ちかという者が淮南わいなんの分司となって、四川しせん※州きしゅう城を過ぎると、往来の人びとが何か気ちがいのように騒ぎ立っている。
万畳ばんじょうの雲なす遠山は、対岸の空にあいか紫かのひだを曳き、四川しせんくだりの蓆帆むしろぼや近くの白帆は、悠々、世外の物のようである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といふのは、われ/\は四川しせん生れの或る退役軍人の家で出逢であつたのだ。くはしく云へば、退役軍人のひつそりした正房の壁にかゝつてゐる画幅の前で出逢つたのだ。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
四川しせん広東カントンは? ちょうど今戦争の真最中だし、山東さんとう河南かなんの方は? おお土匪どひが人質をさらってゆく。もし人質に取られたら、幸福な家庭はすぐに不幸な家庭になってしまう。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
先ず、支那の奥地の四川しせん省から雲南うんなん貴州きしゅうへかけて住んでいる大富豪の中で、お茶の風味がよくわかって、茶器とか、茶室とかの趣味にり固まった人間が居るとしますかね。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ことに折竹は、西南奥支那の Hsifan territoryシフアン・テリトリー——すなわち、北雲南うんなん、奥四川しせん青海せいかい、北チベットにまたがる、「西域夷蛮地帯シフアン・テリトリー」通として至宝視されている男だ。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
四川しせんの大輪山、〈群峰めぐり列なる、異人奇鬼のごとし、あるいは車に乗り蓋を張る、あるいは衣冕峩冠いべんがかんす、あるいは帯甲のごとく、あるいは躍馬のごとく、勢い奔輪のごとき故に名づく〉。
「おおこれは四川しせんの名茶。田舎者の私たちには、めったにいただけない玉茶だ。なんとも、すずやかな香味ですわい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴女は四川しせん省附近に、お茶で身代しんだいを無くした人間が多い事を御存じじゃ無いですか。ヘエ。それも御存じ無い。アノ附近に限られているのですからかなり有名な事実なんですが……。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
葭萌関かぼうかん四川しせん陝西せんせいの境にあって、ここは今、漢中の張魯軍と、蜀に代って蜀を守る玄徳の軍とが、対峙たいじしていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葭萌関は四川しせん陝西せんせいの省境にあたる嶮要けんようで、もしこれへ玄徳の援軍が入ったら、いよいよ破ることは難しいと察していたので、漢中軍をひきいた馬超は
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四川しせんの奥地はすでに冬だった。蜀宮雲低く垂れて涙恨るいこんをとざし、帝劉禅りゅうぜん以下、文武百官、喪服もふくして出迎えた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遼東鮮卑国せんひこく(遼寧省)の兵五万が、西平関せいへいかん(甘粛省・西寧)を犯して四川しせんへ進攻して来るもの。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして彼の領有は、一躍、四川しせん漢川かんせんの広大な地域を見るにいたり、いまや蜀というものは、江南の呉、北方の魏に対しても、断然、端倪たんげいすべからざる一大強国を成した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また劉焉りゅうえんを益州のぼくに封じ、劉虞りゅうぐを幽州に封じて、四川しせんや漁陽方面の賊を討伐させていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ばかをいえ。拙者にはいささか流浪の経験もある。四川しせん広西かんしい広東かんとんの旅もした」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)