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嘲罵
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あざけり
去るものは
疎し——別離は涙か、
嘲罵か、お鯉は
昔日よりも再勤の
後の方が名が高くなった。
羽左衛門のお鯉さん、
桂さんのお鯉さんとよばれる一代の
寵妓となった。
あゝ
此樣な
事と
知つたら
何故倫敦邊の
流行歌の
一節位いは
覺えて
置かなかつたらうと
悔んだが
追付かない、
餘りの
殘念さに
春枝夫人の
顏を
見ると、
夫人も
今の
嘲罵を
耳にして
多少心に
激したと
見へ
苦き
嘲罵………はたや、なほ
奔る
足音………