もろこし)” の例文
天晴あっぱれ仕出かした。今日の一番功ありてこそ誠にわが孫じゃぞ。御身の武勇もろこし樊噲はんかいにもみぎまさりに見ゆるぞ。まことに日本樊噲とは御身のことじゃ」
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
てん和尚の学語編がくごへんにはさけの字を出されたり、はあさぢとよむ也。もろこし字書じしよにはは大口細鱗さいりんとあれば鮏にるゐせるならん。字彙じゐにはせいせいの本字にて魚臭なまぐさしといふ字也といへり。
ここらの海岸は、その昔、高麗こま人を移住させたあとで、もろこしはらと言ったといいます。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もろこし徽宗きそう皇帝さえ苦心して描いた牡丹の図を、名もない田舎の百姓によって季節外れと嘲られたため描き改めたと申すではないか。役目をもって申し付ける。持ち返って手入れ致せ!」
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
げにや我が身のきままに、古事ふるごとの思ひ出でられて候ぞや。もろこしに蘇武といひし人、胡国とやらんに捨て置かれしに、故郷にとどめ置きし妻や子、夜寒の寝覚を思ひやり、高楼に上つて砧をつ。
謡曲と画題 (新字新仮名) / 上村松園(著)