可怪をか)” の例文
「八つ折に疊んで、長い間持つて歩いたんだらう。折目がひどく痛んで、變な匂ひまで附いてゐるが、——可怪をかしいのは日附だよ」
それにしてもあれ程凄まじかつた伝来の流行が、今はもう全くの昔の夢になつたのかと思ふと若い私は可怪をかしな気がする。
鱗雲 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何だか可怪をかしな様子だね私の言ふ事が何かかんにでも障つたの、それならそのやうに言つてくれたがい、黙つてそんな顔をしてゐられると気に成つて仕方が無いと言へば
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「辻堂のとこで手毬をついてゐられたで、こりやどうも可怪をかしい。昼とんびが手毬をつくやうなしをらしいことはすまいと、あの時思つただけど、何しろ俺達おらたち南瓜かぼちやみてェな馬鹿ばかりだで。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
なつ黒羅紗くろらしや半外套はんぐわいとう、いくら雨模樣あまもやうでも可怪をかしい扮裝みなりだ。
「それも判らない。いくら醉つ拂つて居たにしても、すだれ一重の隣りで、人一人殺されるのを知らなかつたといふのは可怪をかしい——」
とか「何うも近頃、村瀬さんの様子は可怪をかしい、恋人でも出来たのではなからうか、といふ専らの評判なんだが何か嬉しいことでもあるんですか?」
女に臆病な男 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
正太は何故なにとも得ぞ解きがたく、烟のうちにあるやうにてお前はどうしても変てこだよ、そんな事を言ふはづは無いに、可怪をかしい人だね、とこれはいささか口惜くちをしき思ひに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「俺もそれが判らなかつたが、金之丞ではあるまいか——と疑つて居た。第一、柳原で俺達へ飛付いた時、あの闇の中で、不意に俺と氣の付いたのが可怪をかしい」
正太しようた何故なにともきがたく、はたのうちにあるやうにておまへうしてもへんてこだよ、其樣そんことはづいに、可怪をかしいひとだね、とれはいさゝか口惜くちをしきおもひに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お茶にしては妙に甘い、そして香氣が可怪をかしいと思ひましたが、三口目には綺麗に飮んでしまひます。
まゝごとの昔しより別れて今ではお前さまお一人をたよりの、お新さま可哀かわゆしとあるは御尤、いひ譯あそばすほどが可怪をかしく、左樣ありてこそ嬉しきお心を喜んで居りまする
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「成程、そんな事もあるだらう。それにしても、妹に言ひ寄る男を一々殺すのは可怪をかしいではないか」
可怪をかしいぞ。すだれが下つて、忌中きちうの札が出て、中から線香の匂ひだ。誰が死んだのだらう?」
お糸が變に金次郎をかばひ立てしながら、洗へば洗ふひまのあるあはせを血の着いたまゝ風呂場に置いて、わざとお前に見せたのも可怪をかしいし、疑へば、お前が物蔭で樣子を見てゐることを知つて
可怪をかしな事があるものだ、もう晝だつて言ふのに、まだ雨戸も開いてねえ」
「これや可怪をかしい。すると金之丞さんが死體を抱き上げた時の足跡は?」
「お前さんも可怪をかしいと思ひましたか。御主人」
「へエ——、少し可怪をかしいぜ、八」
それが可怪をかしう御座います。