たった)” の例文
……もうたった一人になったとKが云った。そうして溜息ためいきいた。Sも死んでしまった。Wも死んでしまった。Mも死んでしまった。たった一人になってしまった。……
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とっさんが手打にするというのはそれはほんのおどしで、能くんな事をいう者だが、私共のような者でも一人娘が時々心得違いの事でもあると、たった一人の娘でも叩き出すというが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乳母 ならっしゃりませぬとも、このを十四ほんけますがな……とうても、その十四ほんが、ほんに/\、もうたったほんしかござりませぬわい。……初穗節はつほまつり(八朔)までは最早もう幾日いくかでござりますえ?
たった一人のいもとだが死んだと思ってな諦めていたのだ、それにのめ/\と尋ねて来やアがって、置いてくれろというから、よもや人を殺し、泥坊をして来たとは思わねえから置いてやれば
お嬢さんたったお一人で神奈川へいらっしゃるんでげすね、何うも変で、お嬢さん悪いことは申しません、わっしと一緒におけえりなせえまし、お供いたします、んなお急ぎの御用か知れませんが
たった一ぺんでも子供は出来ますよ、お前は娘と一つ寝をしたろう、だから只一度でも子は出来ます、只一度で子供が出来るというのは余程よっぽど縁の深い訳で、娘もはじめのうちはくよ/\しているから
今夜孝助様に斬殺きりころされるのも心がら、天罰で手前達てめえたち当然あたりまえだが、坊主が憎けりゃ袈裟までのたとえで、此奴こいつかたき片割かたわれと己までも殺される事を仕出来しでかすというは、不孝不義の犬畜生め、たった一人の兄妹きょうだいなり