古靴ふるぐつ)” の例文
いままでの分は、足にぴったりとしてはき心地ごこちはよかったが、ひどい古靴ふるぐつで、雨がふると、じくじくと水がしみこんできた。
たちま全山ぜんざん高等野次馬かうとうやじうまは、われおくれじと馳付はせつけてると、博士はかせわらひながら、古靴ふるぐつ片足かたあしを、洋杖すてつきさきけてしめされた。
彼れは器用に小腰をかがめて古い手提鞄てさげかばんと帽子とを取上げた。すそをからげて砲兵の古靴ふるぐつをはいている様子は小作人というよりも雑穀屋の鞘取さやとりだった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、村のぬまにしずんでいる、古靴ふるぐつみたいに、海の底にしずんでしまいました。世間でよく言うように、人間はもちろん、ネズミ一ぴき、生きのこりませんでした。
けれども実際、ある日古靴ふるぐつを一足盗まれたことがあって、ブーゴン婆さんの言ったとおりになった。
背景となるべき一つの森や沼の選択に時には多くの日子にっすと旅費を要するであろうし、一足の古靴ふるぐつの選定にはじじむさい乞食こじきの群れを気長く物色することも必要になるであろう。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
のこされたガラクタ——古靴ふるぐつや古寝台や古ズボンは六十三フロリンで評価された。その中には不朽の名作ハ長調の「交響曲」の手写譜が交っていたのはあまりにも痛ましい皮肉である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
壁際かべぎわや、暖炉だんろ周辺まわりには病院びょういんのさまざまの雑具がらくた古寐台ふるねだいよごれた病院服びょういんふく、ぼろぼろの股引下ズボンしたあおしま洗浚あらいざらしのシャツ、やぶれた古靴ふるぐつったようなものが、ごたくさと、やまのようにかさねられて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とき」が編みあげたこの古靴ふるぐつを、ぎざぎざにしておくれ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
壁際かべぎはや、暖爐だんろ周邊まはりには病院びやうゐんのさま/″\の雜具がらくた古寐臺ふるねだいよごれた病院服びやうゐんふく、ぼろ/\の股引下ヅボンしたあをしま洗浚あらひざらしのシヤツ、やぶれた古靴ふるぐつつたやうなものが、ごたくさと、やまのやうにかさねられて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)