叢書そうしょ)” の例文
大正五年四月籾山書店は旧版『すみだ川』を改刻しこれを縮刷本しゅくさつぼん『荷風叢書そうしょ』の第五巻となし装幀そうていの意匠を橋口五葉はしぐちごよう氏に依頼した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでこの間この書物を某書店の棚に並んだ赤表紙の叢書そうしょの中に見附けた時は、大いに嬉しかった。早速さっそく読みかかってみるとなかなか面白い。
鸚鵡のイズム (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私たちの著作を叢書そうしょの形に集めて、予約でそれを出版することは、これまでとても書肆しょしによって企てられないではなかった。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし彼の最も力強い著述は、偉人叢書そうしょ三巻と「ジャン・クリストフ」十巻とである。後者は一九〇四年から一二年までの間に世にあらわれた。
尤も初めは政治、宗教、哲学、科学、工芸、美術、何くれとなく多方面にわたった叢書そうしょを作るツモリで、小説一方と限ったわけではなかったのだ。
それは銀座の歌舞伎新報社から出版された河竹黙阿弥かわたけもくあみの脚本叢書そうしょのようなもので、かの「仲光」や「四千両」や「加賀鳶かがとび」などの正本であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神が祈願の人に霊験れいげんを示す為に、そうせられるのだといっております。(伝説叢書そうしょ。長野県小県ちいさがた郡殿城村)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それらの歌曲リードは、十七世紀の古いシレジアの詩人らの句にもとづいて書かれたものであった。それをクリストフは通俗叢書そうしょの中で読んだことがあって、その誠直さを愛してるのだった。
硯友社の知名作家が筆をっており、現に泉鏡花や江見水蔭などが加わったばかりでなく、オン大の尾崎紅葉までが、匿名でこの叢書そうしょを書くとか、書く予定だとか伝えられたものである。
それは叢書そうしょの第一巻でかの女がつねにほしいほしいと思っていたのであった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
同窓の友人M君から自由学園じゆうがくえん学術叢書そうしょ第一を贈られたので早速読んで見た。
「霜柱の研究」について (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
やがて書棚にあるリーの叢書そうしょの一冊をとって
たしか「少年文学」と称する叢書そうしょがあって「黄金丸こがねまる」「今弁慶いまべんけい」「宝の山」「宝のくら」などというのが魅惑的な装幀そうていに飾られて続々出版された。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それには私は、いなと答えたかった。過ぐる三十年が二度と私の生涯しょうがいに来ないように、あの叢書そうしょに入れるはずの私の著作も二つとは私にないものである。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ジャン・クリストフの文体は(それによって私の作品の全体は誤った批判を受けがちであるが、)「カイエ・ド・ラ・キャンゼーヌ」叢書そうしょ刊行の初めのころ
ただいまちょうど青年叢書という叢書そうしょ物を作っています。たやすいピアノの曲を出すのです。で、シューマンの謝肉祭を簡単にして、四手や六手や八手に直すことを、あなたにしてもらえましょうか。
大量生産の機運に促されて、廉価な叢書そうしょの出版計画がそこにも競うように起こって来たかと思いながら、日本橋にほんばし手前のある地方銀行の支店へと急いだ。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それだから丸善の二階でも各専門の書物は高い立派なガラス張りの戸棚とだなから傲然ごうぜんとして見おろしている。片すみに小さくなっているむき出しの安っぽいたなの中に窮屈そうにこの叢書そうしょが置かれている。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
Everyman's Library などのぎっしり詰まったたなが孤立して屏風びょうぶのように立っている。自分がいちばん多く買い物をするのはまずここらである。実際こんなありがたい叢書そうしょはない。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)